ふうふ、うふふ vol.1
忠犬・遊花
北側にある高窓。
四角い画面を突如襲う閃光。
遅れてすぐに轟音が鳴り響き
時折雨足が激しくなって
窓ガラスを叩き割るかの勢い。
防災無線が叫ぶ。
「台風接近中!
警戒してください! 自主避難先は…」
雷が鳴るときは
大きな音に驚かないように
まずは空を凝視する。
ピカッ☆
すぐに心の準備。
耳をふさいで
それでも目は見開いたまま。
ドーン!!!
今のはデカかったー★
雨はさらに勢いを増す。
…と、そこにオット殿からの着信あり。
「電車動いてなくてさぁ。
新幹線で帰るから駅までお迎えよろしく。」
「雷すごくてチビりそーになったんだから。
とてもじゃないけど無理!」
「チビろーが、脱糞しよーが来て。」
脱糞て…。
雨は少し治まって
ただ空だけがピカピカと不気味に光る。
そういえば子供のころ
お布団の中で聞く風の音が好きだったな。
どんなに寒くても怖くても
お布団の中はあったかくて
空想好きの少女は妄想の中で
ひとり連想ゲームに浸ってた。
あれはきっと幼いころの《現実逃避》
大人になってもなかなかその癖は抜けなくて。
今でもオット殿が帰ってくるその瞬間が好き。
両親と同居したてで窮屈だったあのころ
唯一ふたりきりになれる場所。
たった5分間の内緒話。
雷も雨も止んだあと虫の音が聞こえてきた。
この台風。
あしたには対馬海峡に進み
温帯低気圧に変わるそう。
忠犬・遊花。
そろそろ寝ます。わんわん♪
作品名:ふうふ、うふふ vol.1 作家名:遊花