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散りゆく

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桜の季節が来る

はらはらと散りゆく桜が好きだった
風に舞う花びらを美しいと思ってた

今もそれは変わらない



桜の木の下に立ち
病院の入り口まで見送ってくれた
父の姿を思い出す

離れて暮らすようになって
初めての事だった

振り返るとこちらを見て立っていた
見えなくなるまで立っていた



そんなこと初めてだった
別れ際にだれかを見送るなどする人ではなかった

それがいつもの父であって
何かを望むこともなく当たり前で
当然だった

父の足元を花びらが舞っていく
吹き溜まった花びらがやけに色づいて見えた


これが最後ではないだろう、と
このまま次があるように別れてもいいのか、と

言えぬまま、手を振ることもないまま
ただ姿が見えなくなるまで


きっとお互い
同じことを思ってた


宮崎の桜は早い
家に戻るとまだ満開にもなっていなかった
一昨年の春は桜の季節を2度過ごした



花が終わり緑が生い繁り
毛虫を気にするようになった頃

妹から連絡が入った




そして、その夏
父の遺灰を海に流した
作品名:散りゆく 作家名:たくみ