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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第十七話

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「いい奴を見つけたなあ今度は。俺たちのことはいいからしっかりとあいつについて行け。早く子供を産んで孫の顔見せてくれよ」

「うん、お父さん、ありがとう。お母さんを大事にしてね」

「うん?なんか意味ありげな言い方するな」

「別に。私がいなくなるからお母さん寂しく感じると思うの。時々は帰ってくるけど、お父さんが優しくしてあげたら嬉しいなあって思っただけ」

「おまえも一人前のことを言うようになったな。いいことだ。身体に気を付けて笹川君と暮らせよ。お母さんとはこれを機に旅行にでも出かけるよ。長く行ってないからな。思い切って海外にでも行こうか、なあ良子」

母親はニコッと笑って父の顔を見た。
この時から父は母をあのオモチャで責めなくなっていた。それは母から後に聞いて解った事であったが、恥ずかしそうな表情で母はその代わり指と舌で優しくしてくれるようになったと話してくれた。
父は本当に母を大切にしたいと思い始めたのだろう。

沙代子とその彼と四人で温泉に行く時が来た。
年が明ける前の慌ただしい時ではあったが、みんなの時間の都合は合わせやすかった。
笹川の車に乗り込んで一路伊豆の修善寺に向かうため東名高速に乗った。
万が一のために装着したスタッドレスタイヤのせいかメルセデスにしては柔らかな乗り心地に変化していた。

安全運転をして車は3時間ほどで伊豆半島に差し掛かっていた。
笹川が予約していた温泉宿は独立した部屋が庭続きに6棟あるだけのこじんまりとした隠れ家的な趣を呈していた。

「素敵なところね。お部屋にも露天風呂があるだなんて最高だわ」

美津子は笹川の顔を見てそうつぶやいた。沙代子も頷いていた。

「気に入ってくれたようでうれしいよ。まずは女将に話しておいたんだけど貸切りの露天風呂が使えるから、そこに入ろう。女性陣はバスタオイル巻いて入ればいいからね。部屋に荷物入れたら何も持たずに集合だよ」

「タオルとかあるの?」

「大丈夫。備えてあるから。もちろんバスタオルもだよ」

沙代子の彼は少しためらいを見せたが、断れないと諦めたのか笹川と一緒に更衣室に入った。