ウソ過敏症の女が必要だ!!
本当は私以外にも女がいたのね!!」
「そうだけど……愛しているのはお前だけだ」
ぞわぞわっと寒気が体全体に広がる。
「そんなのウソじゃない!
もう信じられない!!」
最悪な別れ方をした翌日、
体中のかゆみで目が覚めた。
「なにこれ……」
別れたストレスからなのか、
全身にはじんましんが広がっていた。
あまりのかゆみに病院へ行く。
テレビを見ていた医者は、
体どころか顔中にまで広がっているじんましんに驚いた。
「い、いかがなさいました!?」
「それを知るためにここに来たんです……」
詳しい検査を終えて、医者は診断を終えた。
「うそ過敏症、ですね。
最近なにかありましたか?」
「恋人の浮気で別れて……」
「やっぱり。大きなウソがきっかけで発症するんですよ。
ウソに反応してじんましんが出てしまうんです」
「そんな……」
「たとえば、私は幽霊です」
医者のごくごく小さなウソを聞いた瞬間、
体中の皮膚がぞわぞわと総毛立つ。
「……ね? これがウソ過敏症なんです」
「どうすればいいんですか!?」
「薬は出しておきます。
そして、ウソに接しないようにしてください」
「……わかりました」
家に帰るとネット回線を引っこ抜いた。
ネットには情報が多い反面、ウソも多い。
「まあ、これだけやっておけば大丈夫でしょ」
すると、電話がかかって来た。
『もしもし? 美恵子?
病院行ったって聞いたけど大丈夫?』
「あ、うん。軽い皮膚炎……みたいなものだから」
『そっかぁ、別れたショックで何かあったのかと思った。
あんな男、最低なんだから別れて当然だよ。
私もあんな男、クズだと思っていたもの』
ぞわっと体全体にじんましんが広がる。
「ちょっとウソつかないでよ!!」
『え!? ウソ!? ウソなんてついてないよ!』
じんましんはどんどん広がる。
私は慌てて通話を切って、そのまま電話を壊した。
まさか、彼氏の浮気相手って……。
「もう誰も信じられない。
なにも信じられないよ……」
連絡を絶ち、誰にも会わないようにした。
すると、外から声が漏れ聞こえてきた。
『たけや~~さおだけっ。
2本で1000円。2本で1000円』
じんましんが広がる。
切羽詰まった私は窓を開けて怒鳴り散らした。
「うそつき!! 消費税含めたら1080円でしょ!!」
『ご、ごめんなさいっ』
竿竹屋は、私の剣幕に縮み上がってすぐさま訂正。
『たけや~~さおだけっ。
2本で1080円。2本で1080円』
こんな小さなことにも神経を使わなくちゃいけないなんて。
・
・
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「その後、状態はどうですか?」
「ええ、もうだいぶ良くなりました。
ウソを遮断する生活は大変でしたけど、なんとか」
次に病院へ行くころにはすっかりウソ過敏症は影を潜めていた。
「今では小さなウソにも反応することはなくなりました。
先生のおかげですね、ありがとうございます」
「いえいえ、まだ完全には治ってません。
発症したときと同じくらいの大きなウソに触れれば
またぶり返す危険性もありますからね」
「大丈夫ですよ、さすがにあれ以上はそうそうありません」
「それじゃ、完全に治す薬、出しておきますね」
先生はそう言うと、私の様子をうかがった。
じんましんが広がらないことを見ると、すっかり安心。
「……大丈夫そうですね。薬はもう必要ないでしょう」
「はい、先生ありがとうございました」
私は先生に頭を下げて、診察室を出ようとする。
ちょうど通路には1台のテレビがつけっぱなしになっていた。
『すべては国民のみなさんのため!
戦争を回避するためです!
必ず景気を良くします! 絶対に達成します!』
その瞬間、かつてないほどじんましんが広がった。
※ ※ ※
数日後、外交官に新人が一人ヘッドハンティングされた。
新人にもかかわらず第一線にすぐ駆り出された。
「あの女、本当に使えるのか?」
「外国語も話せない普通の人だろ?」
「まったく、上の考えることはわからないぜ」
ほかの外交官からの目は冷たかったが……。
「This is a pen.
(私どもと同盟を組めば、安定した貿易ができます)」
相手の外交官の言葉を聞くと、
外交官は新人に答えを聞いた。
「じんましんは?」
「出ました。ウソですね」
「Ken plays baseball every Monday.
(あなたはウソをついていますね。同盟はできません)」
新人外交官は、さまざまな場に駆り出され
相手のウソをことごとく看破していった。
なお、この小説はフィクションのため
彼女だけには見せないようにお願いしたい。
作品名:ウソ過敏症の女が必要だ!! 作家名:かなりえずき