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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ウソ過敏症の女が必要だ!!

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「やっぱり嘘じゃない!
 本当は私以外にも女がいたのね!!」

「そうだけど……愛しているのはお前だけだ」

ぞわぞわっと寒気が体全体に広がる。

「そんなのウソじゃない!
 もう信じられない!!」

最悪な別れ方をした翌日、
体中のかゆみで目が覚めた。

「なにこれ……」

別れたストレスからなのか、
全身にはじんましんが広がっていた。

あまりのかゆみに病院へ行く。

テレビを見ていた医者は、
体どころか顔中にまで広がっているじんましんに驚いた。

「い、いかがなさいました!?」

「それを知るためにここに来たんです……」

詳しい検査を終えて、医者は診断を終えた。

「うそ過敏症、ですね。
 最近なにかありましたか?」

「恋人の浮気で別れて……」

「やっぱり。大きなウソがきっかけで発症するんですよ。
 ウソに反応してじんましんが出てしまうんです」

「そんな……」

「たとえば、私は幽霊です」

医者のごくごく小さなウソを聞いた瞬間、
体中の皮膚がぞわぞわと総毛立つ。

「……ね? これがウソ過敏症なんです」

「どうすればいいんですか!?」

「薬は出しておきます。
 そして、ウソに接しないようにしてください」

「……わかりました」

家に帰るとネット回線を引っこ抜いた。
ネットには情報が多い反面、ウソも多い。

「まあ、これだけやっておけば大丈夫でしょ」

すると、電話がかかって来た。

『もしもし? 美恵子?
 病院行ったって聞いたけど大丈夫?』

「あ、うん。軽い皮膚炎……みたいなものだから」

『そっかぁ、別れたショックで何かあったのかと思った。
 あんな男、最低なんだから別れて当然だよ。
 私もあんな男、クズだと思っていたもの』

ぞわっと体全体にじんましんが広がる。

「ちょっとウソつかないでよ!!」

『え!? ウソ!? ウソなんてついてないよ!』

じんましんはどんどん広がる。
私は慌てて通話を切って、そのまま電話を壊した。

まさか、彼氏の浮気相手って……。

「もう誰も信じられない。
 なにも信じられないよ……」

連絡を絶ち、誰にも会わないようにした。
すると、外から声が漏れ聞こえてきた。


『たけや~~さおだけっ。
 2本で1000円。2本で1000円』


じんましんが広がる。
切羽詰まった私は窓を開けて怒鳴り散らした。

「うそつき!! 消費税含めたら1080円でしょ!!」

『ご、ごめんなさいっ』

竿竹屋は、私の剣幕に縮み上がってすぐさま訂正。


『たけや~~さおだけっ。
 2本で1080円。2本で1080円』


こんな小さなことにも神経を使わなくちゃいけないなんて。

 ・
 ・
 ・

「その後、状態はどうですか?」

「ええ、もうだいぶ良くなりました。
 ウソを遮断する生活は大変でしたけど、なんとか」

次に病院へ行くころにはすっかりウソ過敏症は影を潜めていた。

「今では小さなウソにも反応することはなくなりました。
 先生のおかげですね、ありがとうございます」

「いえいえ、まだ完全には治ってません。
 発症したときと同じくらいの大きなウソに触れれば
 またぶり返す危険性もありますからね」

「大丈夫ですよ、さすがにあれ以上はそうそうありません」

「それじゃ、完全に治す薬、出しておきますね」

先生はそう言うと、私の様子をうかがった。
じんましんが広がらないことを見ると、すっかり安心。

「……大丈夫そうですね。薬はもう必要ないでしょう」

「はい、先生ありがとうございました」

私は先生に頭を下げて、診察室を出ようとする。
ちょうど通路には1台のテレビがつけっぱなしになっていた。


『すべては国民のみなさんのため!
 戦争を回避するためです!
 必ず景気を良くします! 絶対に達成します!』


その瞬間、かつてないほどじんましんが広がった。



※ ※ ※

数日後、外交官に新人が一人ヘッドハンティングされた。
新人にもかかわらず第一線にすぐ駆り出された。

「あの女、本当に使えるのか?」
「外国語も話せない普通の人だろ?」
「まったく、上の考えることはわからないぜ」

ほかの外交官からの目は冷たかったが……。


「This is a pen.
(私どもと同盟を組めば、安定した貿易ができます)」

相手の外交官の言葉を聞くと、
外交官は新人に答えを聞いた。

「じんましんは?」
「出ました。ウソですね」

「Ken plays baseball every Monday.
(あなたはウソをついていますね。同盟はできません)」

新人外交官は、さまざまな場に駆り出され
相手のウソをことごとく看破していった。



なお、この小説はフィクションのため
彼女だけには見せないようにお願いしたい。