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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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天然小説ってほんとにあるの!?

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空に文字が浮いていた。

青い空のキャンパスには短い物語が書かれている。
周りの人もそれに気づいて、指さしたりしながら読んでいる。

のちに、空気小説と呼ばれるものの登場だった。

「えーー私たち科学調査班の調べによりますと、
 この世界のあらゆるものには意思と感情があり
 それにより、空気が作った小説だと考えています」

「つまり空気が小説を書いたと?」

「書いた、というと語弊があります。
 実際には、いくつも集まった空気たちが
 お互いに合体して小説という文字に変わったんです」

「それじゃあれは空気が状態変化した形なんですか!」

「はいそうです。
 この現象は空気だけでなく、ほかの物でも起きるでしょう」

空気にも意思があるらしい。

そんなふざけた話でも大学偉い教授が話せば
なんだか信じられる気がするものも不思議だ。


最初は戸惑われていた空気小説も、
あるのが当たり前になると、誰も気にしなくなった。

みんな空を見上げて小説を読んでいる不思議な光景が日常に浸透した。

それからしばらくして、科学調査班が新たに会見を開いた。

「科学調査班の調べによると、
 あの天然小説は同価値のものから練成されることがわかりました」

「わかるように説明してください!」

「つまり、いい物から練成された小説は同じレベルの良作。
 逆に、ダメなものから生まれた小説は駄作です。

 澄み切った川から生まれる小説は、いい作品ですし
 下水から生まれる小説はあまりいい出来とはいえません」

ニュースの映像を見ていた俺はそうなのかと驚いた。

毎日、空の上に出ている小説は一定のクォリティ。
楽しくもなく、かといってつまらないわけでもない。

どこへ行っても同じなのかなと思っていた。


試しに、3連休を利用して田舎の方へと遠出した。

電車から降りるとすぐに澄み切った空気が鼻孔をくすぐる。
空にはいくつもの天然小説が浮かんでいた。

「おお、本当にすごいな」

空に浮いている小説はどれも良作。
都会の高層ビルに浮かぶ小説とはわけが違う。

空を読み上げているだけで1日があっという間に過ぎてしまった。

ひとしきり満足した後で、ふと思いついた。

「そうだ……これだけの良作、本にしたらどうなるか」

俺は掃除機を改造し、空にも届きそうなノズルを取り付けた。
スイッチを「強」にして小説を吸い込む。


――すぽっ!


空に浮かんでいた小説は瞬時に吸い込まれる。
掃除機を開けると、くしゃくしゃになった小説が入っていた。

「よし! 吸い込めるぞ! これで大儲けだ!」

田舎の空に浮かぶ小説を片っ端から吸い込む。
さらに、林の中から生まれる小説や
川の水から生まれる小説もどんどん吸い込んだ。

田舎からあらかたの小説を回収すると、
家に帰って真っ白な本にぺたぺた貼り付ける作業にうつった。


「よし、できた!!」


真っ白だった本には小説が押し花のように貼り付けられ
1冊の名作小説として完成した。

さっそく売り始めると、予想は的中!

みるみる家には札束が転がり込んできた。
すぐさま銀行に預けて通帳の残高が上がっては興奮した。

田舎に行って小説を回収し、形にして金に変える。

そんなローテーションを繰り返してどんどん金は預けられた。


一生どころか二生は遊んで暮らせる金がたまった頃、
ついに意を決して銀行へと向かった。

「さてさて、全額引き出してここからは幸せ豪遊生活だ!」

銀行でこれまで預けたお金を全額引き出した。


けれど、出てきたのは金じゃなかった。

「なっ、なんで小説が!?」

ATMの取り出し口には札束ではなく、小説が入っていた。
今更になって、ニュースの映像と言葉が浮かんだ。


『この現象は空気だけでなく、ほかの物でも起きるでしょう』



「俺の金! 俺の金は小説になっちまったのか!?
 うそだ! あれだけ稼いだのに! 儲けたのに!!
 金じゃなけりゃなんの価値もない!!」

「あっ、お客様!」

パニックになって外に出ると、銀行に戻ることはなかった。
しょうがなく銀行員は取り出し口に入りっぱなしの小説を回収する。


「これは……すばらしい名作だ……!」


銀行員の感じた通り、
大量の金から生まれた小説は
その価値とまったく同じくらいに最高の名作として練り上げられていた。

けれど、銀行を出て行った男がその価値に気付くことはもうなかった。

「ああ、また金を稼がなくちゃ!
 金にならなくちゃ、なんの価値もない!!」