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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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矢印は向き合っている…?!

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古株のポトスさん。
初め買って来た時は小さな小さなポトスだった。
少し大きくなった時に植え替えをしたら、葉っぱがどんどん枯れてしまい、ヤバいと思った私は生きている小さな葉っぱの根元をハサミで切り、新しい土に植え替えた。
小さな葉っぱからもう一枚が脇芽のように生えていた。
それはどちらも三センチほどだった。
成長途中を切り取ってしまい、全くその姿から成長する事なく、一、二年はそのままだった。
捨てようかどうしようかと見る度に考えていたけど、結局捨てる選択肢を選ばず枯れるまではそのまま…という選択肢を取った。

そしてずっとずっとそのままだったポトスの茎の一部が、今までとは違う色をしているのを発見した。
よくよく覗き込んで見ると待ちに待った新芽さんだった!!
私は両手をグーにして小さい声で、
『ガンバレーっ!!ガンバレーっ!!』
と応援した。
ポトスの新芽は出始めると、みるみるうちに成長する。
この新しい芽もその字の如く成長した。
そしてここからポトスの復活が始まるのだった。
あの時捨てなくてよかった~。

それから五、六年経つのか…、それよりもっとか…は忘れたけど、ポトスがジャングルになっている。
蔦を絡ませる為に柱のような物を土に刺して、グルグル巻きにしている。
もう今となっては何メートルあるのか分からない。
今までは一つの茎がひたすら成長していたのに、一、二年前からいろんな所から根っこが伸びて、脇芽が出来始めた。
そのせいでもっと今はジャングルになっている。
狭い鉢の中、こんなに成長されても困ると思い、試しでちょっと脇芽をハサミで切ってみた。
それをスーパーで買って来たカイワレの入れ物に水を入れさした。
根っこが出るのが早い早い!!
と言った所で、このポトスの脇芽をどうしよう…。
家じゃもう置き場所もないから飼ってあげられないし…。
と悩んでいたら、今となっては言葉を話すようになったポトスが小さな声で、
『ひろみ(本名)さんのところ…。』
と言った。
聞き取りにくかったから、
『えっ?!』
と聞き返したら、また小さな声で言い難そうに、
『ひろみさんのところに行きたい。』
と言った。
『えっ?!何でひろみさんのところ?!』
と聞いたら、
『…ひろみさんの家に行きたい…。』
と言う。
何処に行きたいかを言うのは簡単だけど、その当のひろみさんがオッケーしてくれるか分からない。
だから私は、
『行きたいからって行けるか分からないよ。』
と言ってみた。
下を向いたままポトスは、
『ひろみさんの家に行って、コス(犬;本名=コスモス)に会いたい。』
と付け足した。
よく人の話を聞いてるなぁ~と感心する私。
『コスだけじゃないよ、光(犬;本名=ひかり)もいるよ。』
と言ったら、
『…光は難しい…。』
と何かを思っているような言い方をした。
『兎に角、ひろみさんに聞かないと分からないから、今は何とも言えない。』
と伝えたら、
『ひろみさんに聞いて。』
と言うポトス。
考える私…。
“聞き難いなぁ~そんな事…。”
と思いながらも、ひろみさんへとし難いメールをした。
“ポトスの脇芽を水に浸けてたら、根っこが伸びて、そのポトスが、ひろみさんの所に行きたいと言い出したんですけど、どうでしょうか?!”
と送り難いメールを頑張ってする私。
ひろみさんからのお返事が来た。
“はーーーい、喜んで~っ!!”
とあった。
ホットするも急いでポトスの元へと小走りで…。
『ひろみさんがオッケーだって。』
と伝えたら、
『コスに会いた~い。』
と一言。
“よかった~。”とか“ありがとう”とかはなかった。
それからいつ持って行こうかと思いながらも、根っこが伸びて土に植え替えられるまでの安定を待った。
そして丁度、ゆきの(馬;本名)のいる馬たちの所へと行くこととなったので、その時持って行こうと思った。
ホームセンターに鉢を買いに行って、その日にポトスさんは鉢へとお引っ越し。
お引っ越しさせながらポトスに、
『気を付けて!!』
と注意された。
まっ、いつもの事だけど…。
そして数日後、馬の所へ…となった。
前の日がひろみさんの誕生日という事もあったので、ロールケーキを買って…、ついでにプレートも用意してもらった。
“ひろみさん おたんじょうび おめでとう”
と書いてもらった。
これはひろみさんへのサプライズとしよう!!

馬の所へと到着して、落ち着いてからロールケーキを出した。
ひろみさんは喜んでくれた~!!
というより驚いていた!!
なんかロールケーキの写真撮ってるし…。
美味しいと評判も良かったので、こちらも満足だった。

そして帰りに車に置いておいたポトスさんとひろみさんがごたいめ~ん!!となった。
そして、
『ポトスさんから一言。“ひろみさん、これからよろしくお願いします。”と言ってますよ。』
と伝えると、
『かわいい~。』
とひろみさん。
『ポトスがひろみさんちの犬に何かされないようにって言ってました。』
と私が伝えると、
『家の犬たちは大丈夫ですよ。』
と言った。
でもポトスとしては納得が行っていないように感じた。

翌日分かった事だが、光のシッポがムチのようになっている。
ウィペットという種類の犬。
そのシッポがもし当たったら、
『葉っぱ、破れるな~。』
とポトスは言った。
それが心配との事だった。
それも込みのひろみさんちなんだからとポトスを諭す。
ポトスは前向きに肯いていた。

そんな日常が最近の出来事。
もしあの時ポトスが成長しないからと諦めていたら、こんな事になっていなかった。
そんな事が何年にも渡って繋がる事になるなんて…。
そして動物を飼う時、
“この子が自分たちを選んでくれた。”
と言うけれど、植物にも選ぶ権利があるんだと知った。
ポトスは自分からひろみさんの家へと行きたいと言った。
ひろみさんもそれを受け入れてくれた。
選び合ってると言っていいのか分からないけど、繋がり合う矢印を持っているのかもしれない。

そしてまた新たにハサミで切られた脇芽さんたちは何処へ向かう矢印を持っているのだろうか…。