イメージ 〈詩集〉
黄色い海
川沿いの道を自転車で通った
懐かしい匂いが最初にやってきて
やがて群生している菜の花を見た
今までに見てきた菜の花を思い出す
桜と一緒の菜の花
線路脇の土手の菜の花
公園に植えられた菜の花
それぞれに幸せだった頃
今独りで見ている河川敷の菜の花
懐かしいと感じさせるのは
農村で育った子どもの頃の記憶
田んぼを黄色い海が拡がっている
その上から上半身だけ見える人
自転車でゆっくり走るのは先生
案内している友達の声が聞こえる
家庭訪問の日だった
なぜ菜の花に隠れていたのだろう
もう友達の顔も思い出せない