イメージ 〈詩集〉
美術館への道
キミと歩いた美術館への道を独りで歩いてきたよ
あの日は熱い夏の陽ざしの中を歩いたが
今日は並木のハナミズキが綺麗だったので
キミと一緒に歩いているつもりになってみた
好奇心の強そうな黒目がちの目を思い出しながら
あの日あまりの暑さで涼みに入ったコンビニで
食べたアイスクリームの冷たさに二人で目を見合せた
ふーっと一息ついたタイミングがぴったりで笑ったね
今日も汗ばむ陽気だったから食べたくなって
歩きながら探してみたが店はなくなっていたよ
横道を見たら植え込みのツツジの花が続いていて
キミが呼んでいるように感じて歩いて行ったよ
それはツツジの出している甘い香りがそうさせたのか
でも思い出したよあの日もここを通ったんだと
木々に半分姿を覆われた美術館が見えてきたから
そのあとキミは靴の底が剥がれたんだよねえ
歩くのに大きく片足を上げないと躓きそうで
ぱったんぱったんと歩くのが可笑しくて
「楽しそうだね」と茶化したら睨まれたっけ
それよりさデートに履くには古い靴だったんじゃない
花々が咲き競い風景は日々様相を変える春
まるで早送りの映像を見ているように
その中でキミとの思い出は季節を問わずとどまる