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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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最高の肩書きを保証します!

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「肩書オークションへようこそ!!
 お客様はとくにラッキーだね!
 今日はサイッコーに良質な肩書が盛りだくさんだよ!!」

人がごった返す肩書きオークション会場。
俺はこの日のために、有り金全部を降ろしてきた。

これまで生きていた人生の中で肩書がいかに重要視されるかを
いくつもの失敗から学んできた。

今日はここで最高の肩書きを手に入れて、
人生の再スタートを華々しく切る、というわけだ。

「よーーし!! 頑張るぞーー!!」

気合十分とばかりに手を振り上げると、
思わず近くにいた老人を突き飛ばした。

「あっ、すみません! 大丈夫ですか!」

「ああ、ああ、大丈夫じゃ。大丈夫。
 それより、お前さん、肩書きを競り落としに来たのか?」

「はい、おじいさんもですか?」

「ワシは違う。
 ワシはここで最高の肩書きを
 競り落とさせてあげる仕事をしているものじゃ」

「最高の肩書きを競り落とす!?
 そんなことできるんですか!?」

「できる、絶対にできる」

どうする。
多少の軍資金は減るかもしれないが頼むべきだろうか。

俺みたいなオークション素人がやるよりも、
このおじいさんにすべてを任せた方がいいかもしれない。

「……わかりました。
 それじゃ、最高の肩書きを競り落としてください」

「料金を払え、これも商売じゃ」

「いくらですか」

「有り金全部」

「はぁぁぁあ!?」

さらりと答える老人に殺意も沸いたけど、
冷静に考えてみると、どうせ全財産かけてでも肩書きを買うつもりだった。

方法が違うだけで、手に入れるゴールは変わらない。

「それじゃ、お願いします」

「まいど」

そうこうしているとオークションが始まった。


「さぁ、まずは肩書き1品目!
 『IT企業の社長』の肩書きです!!
 最初は10万円からスタート!」

「うおおお!」

すぐに肩書きの値段はつりあがった。
IT社長という看板さえ手には入れれば、
きっとこの先どう転んでも不幸になることはないだろう。

しかし、老人はぴくりとも動かなかった。

「あの、あれは落とさないんですか?」

「あんなのは最高の肩書きじゃない」

ははぁ、さすがだ。
やっぱり頼んでよかった。

もし俺だけでやろうとしたら、
この肩書きの時点で尻尾振りながら落札していた。

しかし、この老人はプロ。
なにが劣っていて、何が優れいるのかがわかる。



「2品目の肩書きは、
 『大病院の医師』です! 60万円から!」

さらに注目されそうな肩書き。
これこそ、最高の肩書きだろう。

しかし、老人は動かない。
びた一文も落札しない。

「あの、落札しないんですか?」

「なんのまだまだ」

さすがはプロ。
俺とは見ている世界が違う。

この先に、もっと俺の認知度を上げられるような
最高の肩書きが待っているんだろう。



「3品目の肩書きは……
 本日の最高肩書き!『大統領』です!
 100万円からスタート!」


「うおおお! 来た来た来た!」

老人の予想どおり、最高の肩書きがやって来た。
一瞬にして値段はつりあがり、とんでもない金額になる。

しかし、老人は動かない。

「ちょ、ちょっと!
 なんで落札しないんですか!
 このままじゃ競り落とされますよ!」

「…………」

老人は動かない。
そうこうしているうちに競売は落ち着きはじめる。

「いませんかー?
 ほかに値段を上げる人はいませんかー?」

もう時間がない。
早く競り落とさなければ、最高の肩書きを失う。

「おい! もう時間ないよ!
 早く入札してくれよ!
 この先いくら待っても、これ以上話題性のある肩書きはない!」

「…………」

くそっ!なんでこんな老人を信じてしまったんだ!
金を全額渡したから、俺が入札することもできない!


カンカンッ。

「では、『大統領』の肩書き、落札します」

終わった……。

「やったー! 最高の人気者だ!」

隣で喜ぶ落札者をしり目に、俺は絶望の淵に叩き込まれた。
ああ……もうだめだ……。


「えーーでは、本日最後の4品目。
 ま、誰も興味はないと思いますが……

 『近所のお兄さん』という肩書きです。1円からスタート」


すると、今まで黙っていた老人がいきなり立ち上がった。

「1000万円」

「「「 えええええ!? 」」」

会場中がどよめいた。
もちろん、一瞬で落札は完了した。

一番驚いていたのは、有り金全部を
こんなゴミ肩書きに使われた俺だった。


「ほれ、約束通り、最高の肩書きを落札してやったぞぃ」

「どこがだよ! いやがらせかっ!」

どこをどう考えても『大統領』よりも
『近所のお兄さん』の肩書きが負けている。

なにが最高の肩書きだ。
『近所のお兄さん』なんて肩書きで有名になるわけない。

「はぁ……大損した……」


肩書きオークション会場を後にすると、
外に待っていたのはものすごい数の報道陣だった。

「あなたが1000万で肩書きを落札した人ですね!」
「ぜひインタビューさせてください!」
「今度テレビ出演もお願いします!!」

さして価値もない肩書に、
有り金全部つぎ込んだことで、
その話題性は『大統領』よりもずっと大きいものとなった。