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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ハハッ♪ 任侠ランドだよッ♪

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「パパ、ここが任侠ランドなんだね!」

「ああ、そうだよ」

任侠ランドにはそこかしこに派手なスーツを着た
見るからにやくざな人が歩いている。

ときおり、抗争なども起きて派手な銃撃音も聞こえる。

もちろんすべて、任侠キャストで銃も偽物。
そうはいっても迫力は本物以上。

「パパ、ブラッド・スプラッシュマウンテン乗りたい!」

「ああ、いいとも」

アトラクションのところに行くと、銃を渡された。

「ええか、敵のタマ、とってくるんやで」

「わぁ、楽しみだね、パパ!」
「ああ、頑張ろうね」

アトラクションが動き出し、周りにはやくざが湧いて出てくる。
それを渡された銃で必死に応戦していく。

撃たれたやくざはその場で倒れ、
親分もしくは子分がその体にかけよる。

「無茶しやがって! 死ぬんじゃねぇ!」

「アニキ……へへ、後のこと、頼んます……」

「何言ってやがる! 子供はどうするんだ!
 おい、山口! 山口ぃぃ~~!!」

死んだ山口の人生がプロジェクションマッピングで映される。
ひとりひとりの人生を追った任侠らしい演出だった。

「すごいね、パパ! ドラマチックだね!」

「ああ、思っていた以上に面白いな」

かたき討ちや男の弔い合戦などを体験し尽くして、
アトラクションは終わった。

「あっ、パパ! パレードが始まるよ!」

「おお、もうそんな時間か」

任侠ランドの中央へと急ぐ。
真っ黒いリムジンがゆっくりと園内を巡回する。

客は全員頭を下げて「お帰りなさい、親分」と言う。

これが任侠ランドのならわしだった。

「それじゃ帰ろうか」

パレードが終わり閉演時間が近づくと、親子は家に帰った。
帰りの車の中でも息子の興奮は冷めていなかった。

任侠ランドのどこが楽しかったのかを熱弁していた。


あげく、ついには……。

「パパ、僕、あそこで働いきたい!」

とんでもないことを言い出した。

「それだけはダメだ!」

「なんで? あんなにかっこいいのに!」

「キャストはみんなやくざなんだぞ!
 あんなところに就職したら普通の生活は送れない!」

「知ってるよ、でも、あれが男の生き方だよ!」

「とにかくダメだ!」

小さいころは親の命令は絶対なので、
頭ごなしに納得させられた。

じきに任侠熱も冷めてくるかと思っていたが、
学校の修学旅行の行き先が任侠ランドだと知って凍り付いた。

「まさか……」

嫌な予感は的中し、修学旅行後に学校に呼び出された。
先生との三者面談で、息子の進路希望用紙を見せられた。

「これなんですが……。
 息子さんの第一志望が"やくざ"と……」

「おまっ……やくざ!?」

「だってかっこいいじゃねぇかよ。
 今の大人にはない男同士のつながりがいいんだよ」

「もっとちゃんとしたところにしろって!」

「ちゃんとってなんだよ!
 サラリーマンか!? 土木作業員か!?
 なんで親父が仕事に優劣つけてるんだよ!」

「とにかくダメだ!」

この一件で、息子は口を聞かなくなってしまった。
おそらく、親に黙ってやくざになり、
既成事実を作ることで納得させるつもりなんだろう。

「……なんとか、息子の目を覚ませられないかな」

「あなた、だったら本物を見せればいいのよ。
 あの子は現実のやくざを知らないから憧れてるのよ」

「なるほど」

父親は警察関係者に連絡して、
やくざ摘発の瞬間を息子と一緒に同行することにした。

息子としても、あこがれのやくざが見れるとして大いに喜んだ。

「あれが……やくざ……!」

使われていない倉庫で、何やらマフィアとやくざが話し合っていた。
実際のやくざは任侠ランドの面影もなかった。
なんなら、マフィアの方がそれらしかった。

「どうだ? 本物のやくざは?
 任侠なんてかっこいいものでも、男らしいものでもない。
 ただの暴力団なんだ」

「うん……」

武装した警察が入ってくると、やくざは抵抗することなく逮捕された。
息子にかかっていた任侠ランドの魔法が溶けた瞬間だった。

「親父、俺、間違っていたよ。
 もっと別にかっこいい職業はあるんだな」

「やくざはあきらめたか?」

「うん、もうやくざになんてならない」

父親は安心して家に帰った。




数日後、父親は再び学校に呼び出された。

「息子さんの第一志望が、
 やくざからマフィアになってるんですけど
 お父さん、いったい何を見せたんですか……?」