紅い指(3)
あたしと同じ教会で育った、
一歳年上の愛子とアパートを借りて一緒に住んでる。
愛子は、生まれてすぐに、
教会の前に捨てられているところを
拾われた。
あたしは小学校2年生のとき、
両親がいなくなったから教会に預けられた。
夫婦げんかの末の出来事だ。
酔った父親が母を包丁で刺した。
母は救急車で運ばれたが病院で死んだ。
父親は今も刑務所の中にいる。
「お母さん!お母さん!」
血まみれの母の身体に触ると、
指には真っ赤な血がペンキを塗ったように
ねっとりとついた。
母との思い出はそこで終わってしまった。
まだ温かい母のぬくもりの記憶は、
この指が覚えている。