紅い指(2)
あのときのこと、
忘れたいと思うけれど、
狂ったような夏の暑さがまた思い出させるの。
あたしはゴミのように捨てられて、
そう、あなたと暮らした時間だとか愛だとか、
笑いだとかぬくもりだとか、
そんなものと一緒に捨てられて、
残ったものは悲しみと空しさだけだった。
そしてあたしの抜け殻だけが、
たった一人になったあの部屋に捨てられていた。
あの日から感情はなくなってしまった。
目の前の出来事が二次元に見えるんだ。
そして涙を流しても、
ただ頬を伝うのは冷たい雨に思えるの。
あたしはもう、
あの日から人を愛することはやめてしまった。
だってすべてがゴミになってしまったから。』