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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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死なない俺の彼女

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恋人が死んだ。



そして、すぐに蘇った。

目の前で静かに眠るように病死した彼女。
目を開けるや、立ち上がってしまった。

「さ、里美……大丈夫なのか?」

「……ええ、だいじょうぶ」

「大丈夫って、あんなに体弱っていたじゃないか!
 本当に死んでいるのか……?」

「ええ、死んでいるわ。
 今の私はリモート死体、やることがいっぱいよ」

「やることって?」

里美は静かに荷物をまとめはじめた。
寝ていたベッドを整え、病室の荷物を家に持ち帰る。

お世話になった人たちにお礼参りをしていく。


だんだんと、彼女が何をしているのかわかってきた。

「里美! お前、まさか終活を……!?」

「ええ、そうよ。
 人間は死んでも一定時間はリモート死体になる。
 身の回りを片付けたら、自動的に死体に戻るわ」

「そんな……そんなのいやだ!
 また君を失う恐怖を味わせるのか!?」

「人は死ぬ。なんの前触れもなく死ぬ。
 でも、ほかの人に迷惑かけるわけにはないから……」

「このままいればいい! 死体でもなんでも!
 今の君はこうして生きているじゃないか!」

「死ぬために生きているの」

彼女は構わずに終活を進める。
まるで、自分自身の痕跡をこの世界から消すみたいに。

「待ってくれ! せめて、葬式を!
 俺の手で葬式をさせてくれ!」

「不要よ。お金も手間もかかる。
 リモート死体は最高効率で最低額で終活を済ませるわ」

「それじゃ俺が納得できないんだ!
 君を二度も失ったことを乗り越えられない!」

「時間が解決するわ」

「でも……!」

彼女は止まらなかった。
思い出のアルバムもあっさり燃やし、
自分の品々を迷いなく処分していく。

その方が、残された人が死を乗り越えやすいのかもしれないけど……。

「俺は……俺は君を忘れたくないんだよ!
 心に刻み付けるために葬式を!」

「二度は言わないわ。それはできない」

「人の死は物を捨てるのとは違うだろ!」

「同じよ」

ダメだ。
このままじゃ、すべての痕跡を消される。
リモート死体のせいで。

焦り迷った俺は台所に走って包丁を持ち出した。

「……ごめん!」


※ ※ ※


葬式には親族や友達が参列した。

「里美ちゃん……ありがとう」
「里美さん、いい子だったね……」

誰もが涙を流し、思い出を惜しんでいる。
俺もさっきから頭に、彼女との記憶が思い出される。

「でも、変ね。里美ちゃん、病死だったんでしょう?
 なんで体に傷があったのかしらぁ」

「きっと死体の処理で必要なんでしょう。
 ほら、血抜きみたいなものよ」

リモート死体を殺したら、さすがに二度目はなかった。

形として、彼女の終活を中断させてしまったが
こうして葬式できたことで後悔はない。

「それでは、火葬します」

俺とそう変わらなかった背丈の彼女は白い灰になった。

「やっぱり葬式してよかったな」

俺は嬉しくなった。
最後の思い出に彼女の家によることに。



「里美……なんで……!?」

家には、終活の続きを進める彼女がいた。

「私はType-200AE32。
 終活の続きをするためにやってきました」

俺は自分の背中に印字されている
製造番号に気付いたのはその日だった。
作品名:死なない俺の彼女 作家名:かなりえずき