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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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剣道先生

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昨夜遅く店に訪れた客は、老齢の剣客だった。
秋山小兵衛みたいなひと。
剣道七段、そして小中学校の子ども達に剣道を何十年も教え続けてきている先生だった。
オサナイ先生という。


先生は淡いピンクのシャツに茶のベスト、ノータイでなかなかお洒落なのだが、その服装の下にはしっかりとたくましい筋骨が在るように見えた。
オサナイ先生は、生徒達の話をするのだった。
ワルだったいい子。筋はよくないけど頭は抜群の子。小さい子、大きい子。
りっぱに教えを通しやり遂げた子、ずるい子、弱い子、泣き虫、公平な子、
先年甲子園をにぎわした双子の高橋兄弟も教え子だそうだ
(なんでも甲子園に出られたのは剣道を習ったおかげだとご父君がインタビューで言ってしまったとか)。
初めて声を上げて笑った自閉症の子もいた。
先生はどの子もみな可愛がってこられたように見受けられた。
どの子ども達のことを話す時も、すごく嬉しそうな顔をするからだ。


わたしはお話を伺いながら、なんどもなんども、小さな声で
「わたし・・・」
「わたし・・・」
と言いかけては、話をききたいから口をつぐんだ。
「わたし」の先に続く言葉は、「もう一度一年生になって先生に習いたい」
だった。
わたしは子どもだから、子ども達の気持ちがよくわかった。
皆、オサナイ先生にほめて欲しくて行くのだ。
だからきつい稽古もがんばり通せるのだ。
オサナイ先生は横の連帯も気づかせてくれる。なんでも学びと遊びにしてしまう。
皆親でもなくほかの先生でもなくオサナイ先生から、ご褒美をもらいたいのだ。
よくやったの言葉、あめ玉ひとつとかジュース一本。
そういう先生なのである。


忘備録、忘れることがないように、教えていただいたことを記しておく。


1.ダメと思うからできない(やらない)。→一日5分机(やるべきこと)に向かえ。5分できたら10分にしろ。飽きてきたら声に出して本を読め。(すると英語の成績がまず上がるんだそうな)

2.勝ちに理由はないし要らないが負けるのには理由がある。

3.礼儀とは感謝と思いやりの心を表すこと。

4.神や心には触ることができない(先生自身は「神はいてもいなくてもいい」とおっしゃっていたが)が、鏡に映った姿がそれである、
だから神社などの御神体は鏡であることが多い。

5.目標と報酬があれば人間はやる。



忘れることがないように。
作品名:剣道先生 作家名:青井サイベル