神さまとウサギ
神さまのところへ行きました
神さまはなんにもおっしゃらず
ただいつくしみのまなざしでウサギを見ました
ウサギはしあわせになることを望んだのです、
そしてなにがなんのためになるのかわからなくなって
泣いていたのです
願いのために泣きましたが
なぜ泣いたのか
それは願いのすすむみちがまちがっていたからだと
ウサギはやさしいまなざしの中できがつきました
神さま
他のひとびとはいろいろにあなたを呼ぶけれど
わたしはただ神さまという呼び方しかしりません
でもあなたはただあなたで
このような小さな生き物に慈悲をくださる
みちびいてくださる
あなたのよろこぶみちをあるきましょう
それが願いのただしいみちなのだと思います
神さまはなんにもおっしゃらず
ただ水のようにしんとやわらかなまなざしを注ぎつづけ
ウサギは赤い目をさらにも赤くして
泣いたのでした
神さまけれどもわたしには
欲もございます、すてきれぬのです
これがわたしなのです
願いをただしくわかることは
まだ先のことかもしれません
ただあなたは見ていてくださる
どうかわたしにただしいみちをお示しください
いつの日か おんもとに
神さまはかるく手をのばされ
口もとに笑みをたたえたまま
ウサギのみみをやさしく撫でられました