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聖夜

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クリスマスイブに生まれたから、

僕の名前は星哉。

『聖夜』に因んで、

両親がつけてくれたんだ。


両親の結婚記念日も

12月24日。


パパとママの出会いが、

クリスマスパーティーだったんだって。

だから入籍も記念すべき12月24日にした。


それにしても、だ。

そのパパとママの間にできたこの僕も

クリスマスイブが誕生日だなんて、

よほど何かの因縁があるのかなあ。

10歳になった今現在思うことは、

もしかしたら将来の奥さんの名前が

マリヤとかだったりするのかも。

僕、宣教師になったり、

ゴスペル歌手になったりするかも。

今はその片鱗もないけどね。


で、今日は12月24日なのに、

僕の誕生日なのに、

両親の結婚記念日なのに、

なんで僕、家に一人ぼっちなんだよ。




それもこれも、

僕が言い出したことなんだけどさ。


今日はクリスマスと僕の誕生日のお祝い、

家で、家族でやるはずだったんだけど、

パパとママの仲人さんが亡くなったとかで、

急にお葬式に行くことになっちゃって。


「ひとりで留守番してる!」

なんて意地を張ってこの様さ。


おなか、すいてきた。

台所にはママが作ってくれたから揚げとか、

いろいろあるんだけど。


あっ! 雪が降ってきた!

そうだ、大きな雪だるまを作って、

パパとママをびっくりさせてやろう。


捨てるはずだった若いころの

パパとママの服が物置にあったはず。

あれを雪だるまに着せてあげて、

パパとママそっくりの雪だるまにしてあげよう!

うん、我ながらいいアイデア。

僕ももう大人だから、

両親に結婚記念日とクリスマスの

プレゼントくらいはしてあげないとね。


で、雪だるまを作ってると、

うしろから声をかけられた。

「雪だるま作ってるの?」

見たことのないおじいさん。


「これはパパとママの服だね」

おじいさんはそう言ったんだ。

「おじいさん、パパとママを知ってるの?」

「うん。すこーしだけね。

そうそう。このパパのカーディガン、

お尻にもポケットがあって、変なデザインだったな」

おじいさんは懐かしそうに、

パパの服を着た雪だるまの背中をポンと叩いた。

「両親は今留守ですが、お知り合いだったら

家の中で待っていてください。夜には帰ってきますから。

僕は雪だるまを仕上げてしまいます」

「いいんだ。用事はもう済んだから。

星哉くんの顔も見れたし。

私はもう帰るとしようかな」

おじいさんはとっても幸せそうに笑って、

雪の中を歩き始めた。



日が暮れかけて、

パパとママは帰ってきた。

「この雪だるまは星哉が作ったの!?」

「僕からの結婚祝いとクリスマスのプレゼント」

「この服、懐かしいわね。物置にあったのでしょ?

パパのこのカーディガン、お尻にポケットがついてるダサいヤツ!

あれ、中に何か入ってる」

ママはポケットから指輪を取り出した。

「これ!?」

パパはびっくりしてた。

クリスマスにママにあげようとして、

酔ってどこかに落としたと思ってたらしい。

「付き合って1年目のクリスマスだったな。

あの店で、どこかに落としたと思ったけど」

「オーナーも巻き込んで、みんなで探したけど見つからなかったのよね。

お尻のポケットにあったなんて」

「おかしいな。ポケット全部探したはずなんだけど」

「13年も立って出てくるなんて。不思議ね」

「これも星哉が雪だるまを作ってくれたおかげだね」

「ほんと。最高のクリスマスプレゼントね! 星哉ありがとう」

パパとママが喜んでくれてよかった。

あっ、おじいさんが来たこと、言うの忘れた。

そう言えばあのおじいさん、僕の名前を知ってた…。


クリスマスケーキを食べながら、

ママはアルバムから一枚の写真を見せてくれた。

「あ、これこれ。あの雪だるまのカーディガンを着てる写真。

若いころのパパとママ。

これが今日お葬式だった仲人さん。

レストランのオーナーだった人よ」




ママが指差した人は、

今日来たおじいさんにそっくりだった。

作品名:聖夜 作家名:セリーナ