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Secret Garden

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初恋の話になると、

決まってあの子を思い出す。


同い年で、引っ越す前の家の近所に

住んでいた男の子。


小学校に入学したばかりだった。

私たちは、近所にあった空家の庭に花を植え、

ふたりだけの秘密の花園を作って遊んでいた。


日曜日になると、学校の花壇に植えてある花を

こっそり引っこ抜いて、スーパーのレジ袋の中に入れ、

秘密の花園に持ち帰り植え替える。


フリージアの黄色やチューリップのピンク、

紫のパンジーにオレンジのキンセンカ、

色とりどりの春の花たちが増えるたび、

私たちのテンションは上がった。

学校の花をこっそり盗んできた罪悪感と、

ちょっぴりの恋心のドキドキ感がミックスされて、

その場所でふたりきりで逢うことは、

禁じられた遊びみたいだった。

秘密の花園は、ふたりだけが知っている

楽園だった。


ある日、楽園はなくなっていた。

フェンスが出来て立ち入り禁止になり、

建設工事が始まった。


秘密の花園を壊されてしまった私たちは、

それからふたりで逢うことはなくなり、

学校で顔を合わせても視線をそらすようになった。


そのうちに、私は父親の転勤で引っ越すことになった。


春の花を見ると、今でも秘密の花園と、

そしてあの子を思い出す。

私の初恋は確かにあの子だった。

けれど違う名前を口にするのは、

あの時間はふたりだけの秘密だったから。
作品名:Secret Garden 作家名:セリーナ