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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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きっかけの先にある答えって分からないな~。

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なので、
『鼻~。』
と言って触った。
約束通りな感じ。
そして、
『で、何が言いたかったの?!』
と私は聞いた。
黒モジャはポニーちゃんなので、結構低い…。
目を見るにはしゃがまないと見えない。
反応がないので、しゃがんだ。
・・・目を合わせようとはしない・・・。
?!どういう事だ?!と思った私は、怪しく感じた。
話し掛けて来た態度と違う…。
もっと下を見ているので、私はもっとしゃがんでその目と目を合わせた。
目が合った瞬間、黒モジャがギョッとした。
それでも私は分からなくて、何故こんなにも態度が違うのかを探っていた。

そんな事をしていたら、調教師さんが一番大きな馬、ワイキータの事を聞いて来た。
(ひろみさんは調教師さんに私の事をずっと伝えていたようで、不思議がられたまま受け入れられた。
そこについては、ありがとうございます。)
『この馬が、歯が痛いって言うんですけど、何処が痛いと言っていますか?!』
と直球な質問。
まだお会いするのは二回目なのに、自分みたいな人間が出しゃばっちゃいかんという思いと葛藤しながら、大きな馬と向き合って様子を見た。
本当にデカいからビク付く私…。
お利口さんにこちらをじっと見つめて動かない。
『うん、お利口さん。』
と言い難いのは何故だろうか…と不思議に思う。
後で分かった事は、このワイキータの年齢は二十才との事。
おばあちゃんらしい。
だからか、上から物を言い難い…という事かぁ~。
そして、しばらく見ている私に調教師さんが、
『この辺をかばうんですけど…。』
と言ってくる。
私は肯きながら、
『なんか、歯と歯の間に、なんか木くずのようなものが刺さってて、そこを上の歯で押さえ付けた時に痛い…のかなぁ~。』
と伝えた。
調教師さんは肯きながら、
『そうです、そうです。そうだと思うんです。』
と言う。
『馬って歯磨き出来ますか?!口を“あ~ん”って開けて、ゴシゴシと…。』
と聞いてみたが、そう簡単ではないようだった。
でも、どんなに分かったところで私が出来るのはここまでなのだ。
助けることは出来ない。
分かることを伝える事しか出来ない。
そこが悔しいところでもある。
それを伝えたくて、ワイキータは遠くから声を掛けようとしてたのだろうか…なんて思ったら、
『違う。』
と一言届いた。

そんな事を話していたら時々、黒モジャが茶混じりモジャと白モジャを蹴散らしていた。
あれれ…?!話し掛けて来ていた態度とえらい違う。
どういう事だろうかとみんなと話しながら私の心は黒モジャを探っていた。
“自分は一番小さくて、弱くて、可哀想なお馬さんなの…。”
というような態度じゃない!!
詳しく調教師さんに聞いた。
黒モジャ・茶混じりモジャ・白モジャは一つの大きな小屋に三頭で飼われている。
その中で一番強いのが、なんと黒モジャだった。
次に茶混じりモジャで最後が白モジャという事だった。
エサを食べる順番も黒モジャから…。
私は黒モジャを見ながら、
『ほぉ~。そういう事かぁ~。』
と肯いた。
黒モジャはまだ行けると思ったようで、可愛い子ぶってきたけど、
『もうそんな手には乗らない!!』
と心の声と態度を私は表した。
通りで白モジャと会話が出来ないわけだ…。
空間に出て来る画面に白モジャはなかなか出て来ない。
いたとしても、遠くからチラ見するような格好で何かを警戒しながらこちらを見ている。
こうやって会話するのも黒モジャが邪魔をしているという事が分かった。
というかこの状況も誰かが邪魔出来るんだ~と知った私。
何だかしゃくだけど、黒モジャと白モジャの立ち位置のおかげか…。
でもなんでだろうか…ありがと~って言えねぇ~!!

そして黒モジャがエサを食べ始めたら、白モジャが横の小屋から片目だけ出して固まっていた。
こっちに来たくて必死なんだな~とその必死さをめちゃくちゃ感じた。
ちゃんと息出来てるのかなぁ~というくらい、黒モジャに対して存在を消す。
『黒モジャなんか気にしなくていいから、こっちにおいで。…今のうちダッシュッ!!』
と言ったりもしたけど、それ以上に黒モジャの殺気がすごいらしい。
黒モジャが顔を上げてちょっと白モジャの方を向いたりしようものなら、白モジャも黒モジャから目を逸らすように首を曲げた。
そんな事を何回も繰り返す。
結構近付けた所で、黒モジャにバレて追い掛け回されて、また振り出しに戻る。
それを何度も何度も繰り返していた。
それが馬の世界のルールらしい。
私にとってはもどかしくて仕方がなかったけど、しょうがない事なんだと自分自身に言い聞かせた。
そして何度も何度も繰り返してやっと、私の手の届く所まで近付いた。
近付いたと言っても私が檻の中に手を突っ込んでの距離くらい、柵まではまだまだだった。
今のうち!!と思った私は、
『はい、チュッ。お手手に、チュッ。』
と言って、白モジャの鼻に手の甲を付けた。
白モジャの嬉しさが伝わらないほど、黒モジャが怖くて硬直したまんまだった。
よくそこまで硬直になれるなぁ~というほど、置き物のようだった
そんな事を何回も繰り返していた。

黒モジャの正体が私にバレたからか分からないけど、黒モジャが急に近寄らなくなった。
それは不思議だった。
ただただお腹が空いていただけなのかもしれないけど…。

そして、長居はしないとメールで伝えておいたのに、ついつい遅くまで長居してしまったのだった。
調教師さんすみません…。

帰る前に、もう一度馬たちの所へと行った。
ゆきのは側まで来てくれなかった。
ひろみさんがゆきのに、
『どうしたの?!な~に、照れてるの~?!あいちゃんが帰るって言ってるのに、こっちに来なくていいの~。』
と言っていた。
ひろみさん曰く、
『いつもと態度が違った。目がとっ~ても優しかった~。』
と。
そして白モジャは近くに来れず、私たちが小屋の外を通ってる時に外まで出て来た。
やっと近くで触れたと真っ暗の中、そう感じた。
車が出て行く所もずっと白モジャは見送っていた。
健気だった。

結局は、黒モジャが話し掛けて来た事がきっかけでこんな事になった。
まあ、話し掛けて来る態度と本性は違ったけど…。
そして空間に映る画面に黒モジャは姿を見せなくなった。
本性がバレてバツが悪いのかもしれない…なんて思う。
近々、白モジャの後ろからチラ見してくる日もそう遠くなかったりして…。

調教師さんたちと話している時に、シーンとなる瞬間があった。
私は一旦話を止めて、
『話し始めるとこんな風に動物たちが静かになるんです。』
と馬たちが私たちを取り囲むように静かに見ていた。
調教師さんはその事に肯いていた。
私が動物の所へと行くとどうも心を開放してしまう。
動物の持ち主の方に迷惑を掛けてはいけないとお母さんと旦那さんは言う。
そこはしっかりと線引をするようにときつく言われている。
そう言われているけど、線引って結構難しい…。
気付いた時には線を越えてる事なんてしょっちゅうある…。
私は動物たちに、“ありがとう。”と言ってもらえたらそれだけで十分なのだ。