ニケを捕らえよ
決め付けたくない
簡略化できずそれでいて簡素そのものの
その思慮をただだまって受けている
飢えに飢えたこの千本の手が引っ込んでから
この混乱がおさまり、つくろい笑いが消えてから
はじめてその丸薬を飲み込みたい
消費したくない
大切に大切に、永遠に飲み込みたい
この朝、大気は澄み、草木の若い芳香がたちこめた
空には、はね雲
宵には、星
そしてまた、芳香
存在は、飛天は東方へ
ブラックホールのような吸引破壊をストップさせた私は
ただ呆けて座っている
空虚だった場所に何か
かつて知っていた、
そしてきっとよきものとわかる
ぬくみをたたえた卵を預かって
抱いて座っている
これは生きてる、脈打って
あたたかい
私は凍えていたらしい
飛天は微笑み飛び去ったが
その緒の端を握り
目を閉じて私は座り続ける
内なる口は呼ぶ、遥か、その名
その名