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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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あ。今おれ、いいぜ。

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「おれ、いま、すっげえいいぜ」


カッコつけることに心砕いてきた。それは若い誰しもが通る道。
流行に乗ろうが避けようが、そこに捉われていることは変わらない。
そして若いなりの夢を見る。



「初体験は海の見える素敵なホテルで」(新大久保でやれ。休憩2千円だ)
「小金があってオフは女子会や彼氏とのデートにあちゃらこちゃらで遊びまくり、大型休暇には海外行きまくり」(とりあえずドラマ視るのやめろ)
「ジムでヨガして美しいボディラインを保ち、センスはパリジェンヌ並み」
(ラーメンも喰えねえ)
「美しく年齢を重ねていま、ハマっているのは寺社・仏閣めぐり」(寂聴への道)



そのどれ一つとして、叶うことはなかった。
全部ハズレ。ガリガリ君ですら当たったことない。
ところがたった今、自分を俯瞰する自分を得て、急にパズルがパタパタパタッと嵌まるように、判ったのだ。



こうしてよしなしごとを綴りながら、お気に入りのマグカップでコーヒーを飲みながら、好きな音楽聴きながら、ふと判ったのだ。この姿、かたち。行為。
書いてることはたぶん何にもならないし、身なりはみすぼらしいし、コーヒーはインスタント、音楽はあまり人好きのしない代物。それでも。



「おれ、いま、すっげえいい」
「これが、ずっとやりたかったことだったんだ」



リア充って、なんだろう。
その言葉をもちいる人々は、本当にそのリア充とやらを憎むのか、憧れるのか、どうでもいいと思ってるのか、実はからかいたいのか、ただ流行ってるから言うのか、わたしには判らない。
どんな状況だろうが、自分が好きでいる状況にいられれば、それがたとえ一日でたった10分のことであっても「充」、なのかもなあ、なんて思う。
中年なんでわからない。



貧乏人で、あり余る暇があって、好き勝手に生きている。
これは多分持病がわたしに課したレールだ。レールというよりも獣道かもしれない。
こうして書いてると泰平楽みたいに見えるかもしれないが、実際わたしに取って代わったら人は「たまらん、こりゃイヤだわ」と思うかもしれない。
不自由がないわけでもないし、心配事や悩みも人並みにある。
でもこれを選んだのは間違いなく自分。
これしかないからこれだけやる、と選んだのは自分。
そこには不思議と悲壮さも投げやりさも無かった。
するりと運命の手のひらにすべり込んだような感覚だった。



水木しげる先生は、幸福になるための条件のひとつに、
「好きな事だけをやりなさい」
とおっしゃっていた。



そう。



いつか、いくばくかのお金を貯めたら、バリ島へ行こうと話している。
精霊のいるという、緑の島に。
あそこには心が充実している人しか、いないと聴く。