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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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落語でひと息いれませんか?

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あたま山



「ああ、腹が減ったなぁ。
 なにかないものかなぁ……」

腹が減った男はサクランボの木を見つけた。
これ幸いとばかりに手を伸ばして、サクランボを一つまみ。

あっという間に平らげると、
口の中にはサクランボの種だけが残った。

ケチな男は種すら吐き出すのももったいなくなり、
そのまま種を飲み込んだ。

「ふぅ、多少はマシになったかぁ」


変化が出たのはその翌日。

「おい……お前、頭から桜の木が……」

「えっ?」

男は慌てて鏡を見てみると、
自分の頭から大きな桜の木が生えてきていた。

「なんじゃこりゃあああ!!」

あまりに立派な桜の木が生えたもので、
男の頭はあっという間に桜の花見スポットへと化した。

「いやぁ、立派な桜の木だ」

いつしか男の頭は「あたま山」なんて言われて、
噂を聞いた人がどんどん集まるようになっていった。

迷惑なのはその男。

昼夜おかまいなしに頭の上ではバカ騒ぎ。
心落ち着ける瞬間なんてどこにもなかった。


「あああ! うるさいうるさいっ!
 お前ら全員、俺の頭で勝手なことするんじねぇ!」


男は耐えきれずに、頭の桜の木をひっこぬいた。

「やれやれ……これで静かな日が取り戻せる」

桜の木がなくなったことで、静かな日常が訪れる……。



そんなのはわずか数日だった。

桜の木が抜かれてぽっかり空いた穴。
そこに雨水がたまるや、今度は大人気の湖になった。

誰かが持ち込んだ魚が放流されると釣り堀に、
スワンボートも出てきたりして、憩いの場となってしまった。

「いやぁ、ここはいい釣りスポットだねぇ」
「湖面も穏やかで風もないし最高だ」
「さあ、今日も釣りを楽しもう」

あたま山には釣竿を持った人がごった返し、
ミーハーな人も集まって釣竿を振り回す。


「いたたたっ! 痛っ……痛いって!」

男のまぶたや鼻の穴に釣り針が引っかかる。
そうこうしているうちに顔の数か所に釣り針が。


「いい加減に……しろぉぉ!!」

男はもう耐えきれなくなって、
自分の頭の湖へと身を投げてしまった。