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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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落語でひと息いれませんか?

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短命



葬儀屋さんのところに、老人がやってきた。

「葬儀屋さん、質屋の婿養子が3度目の死です」

「さ、三度目?
 人が3回も死ぬことなんてあるんですか!?」

「ああ、いや、3人目の婿が死んだんですよぉ」

「そ、そういうことね……」

葬儀屋は老人に連れられて質屋のもとを訪れた。
死んだ主人は死に顔もびっくりするようなイケメンだった。

「そういえば、これが3人目なんですね?」

「ええ、これでこの質屋の主人がなくなるのは
 今回で3度目、参ったもんです」

「夫婦仲が悪くて、そのストレスで死んだとか?」

「いえいえ、夫婦仲は良かったんです。
 おしどり夫婦だと近所で評判でした」

「ますますわからないな。
 実はその妻がものすごい悪女だったとか?」

「いえいえ、質屋の妻も気立ての良い人ですよ。
 そしてなにより、びっくりするほど美人なんです」

「え、ええーー……。
 それじゃなんで立て続けに死んじゃうんだろ」

葬儀屋が首をかしげていると、
そこに医者がやってきた。

「ああ、なるほどなるほど。
 これは3人目も同じ死因ですね」

「そうなんですか?
 なにが死んだ原因なんでしょう?」

「奥さんが美人なのが短命の原因だね」

「美人が? そんな馬鹿な」

「一緒に食事を取るだろ。
 お茶碗を嫁さんから渡されて、手が触れる。
 そりゃあきれいな手だ……間違いなく短命になるね」

「……は?」

葬儀屋は医者の言葉にぽかんと口を開けた。
医者はこれで間違いないとばかりにドヤ顔をしている。

「それじゃ2人目の短命は?」

「冬が来て二人でこたつに入る。
 みかんでも取ろうと手が触れるだろ。
 テーブルをはさんだ先には、びっくりの美人……短命になるね」

「……はい?」

葬儀屋はやっぱりわからない。

「それじゃ1人目の短命も美人が原因だってのか?」

「ええ、何度も注意したんですよ。
 すぐにその嫁さんから離れろ、とね。
 でも、何度言っても旦那は聞かなくてね」

「ま、まさか……嫁さんの皮膚が猛毒性の特殊な……」

「何言ってるんですかあなた」

葬儀屋のぶっ飛んだアイデアは一蹴された。

「お前さん、目の前に美人が出てきて
 その美人が"あなたを愛してます"と言ってきたらどうする?」

「そりゃ嬉しくて……キスするかな。その先も」

葬儀屋はハッとして、ついに原因がわかった。

「まさか……」

「ええ、妻を愛しすぎたんですよ。
 年甲斐もなく昼も夜もやりすぎた。
 なにごともやりすぎは体に毒なんです、だから短命になるんです」

葬儀屋は仕事を終えて家に帰った。

「あなた、お帰りなさい。
 晩ごはんできてるわよ」

「ああ」

嫁が茶碗を持つ手と、葬儀屋の手が触れた。
葬儀屋は医者の言葉を思い出し、嫁の顔を見つめた。


そして、深いため息をついた。

「ああ……俺は長生きだ……」