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僕の好きな彼女

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「まず、聞きたいのはどうして『僕』なんだ?」
それは最初であり、多分一番肝心な疑問だった。
すると彼女は少しだけ考え込むように俯いて、言葉を選ぶようにしながらゆっくりと口を開いた。
「あなたには、私の『声』が届いたから」
そして、彼女はそう言った。
僕にはその意味がまたよく分からなかった。
多分そのまま僕の疑問は僕の表情に出ていたのだろう。
彼女が僕の目を見て、チェスの次の手を考えるかのように言葉を選びはじめたのが、また眉間にしわを寄せた顔つきで分かった。
「私はこうなって――死んでみて、はじめて分かったことがあるの。『世界の仕組み』というか、構造のようなものだけど、ほんの少しだけ生きているときには気がつかなかったような、同じ世界の風景を見ていても少しだけ『だまし絵』のような変わった構図に気がつくような」
そして彼女は真っ直ぐ、僕に向けて右の手を突き出した。
「あのとき、私は手を透かしていたの。あなたが私を見つけた、ちょうどあのとき。童謡にあるでしょ?――『手のひらを太陽に透かしてみれば』って。私は自分が死んだことがどこか信じられなかった。何かの間違いじゃないかって思う瞬間があった。だから、手のひらを太陽に透かしてみていたの。歌詞で言う『真っ赤に流れる僕の血潮』が見えるんじゃないかって」
僕に向けて突き出された彼女の手は青白く、さっきのように透けてこそいなかったが、その色素はひどく希薄なもののように見えた。
「私の掌は、赤く透けなかった。白く浮かんだ掌は、白いまま陽に向かってた。だから、私は自分が生きていないんだって、その時に改めて思い知ったの。それに、私の姿はね、見えるヒトと見えないヒトがいるみたいなの」
そして彼女はそこまで続けてから、一度言葉を切った。
そしてずい、と僕に向けて突き出された手を伸ばした。
僕はといえば、反射的にだが一歩後ろに身体が退いてしまった。
「気持ち悪いでしょうけど――でも、触れてみてくれると、分かると思う」
少しだけ声のトーンを落として、彼女がそう呟いた。
僕は、
我ながら物好きだとは思いつつも、彼女の手のひらに向けて自分の左手を伸ばした。
彼女に向けて伸ばされた僕の手が、彼女の手に重なり、指と指とが絡みあう――
作品名:僕の好きな彼女 作家名:匿川 名