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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第四話

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「ないよ。しっかりと考えて生きている人だからね。尊敬しているぐらい」

「よく話してくれていた経済的にしっかりとしている人を選びなさい、という事だったのね?男としては・・・どうだったの、変なこと聞くけど」

「そうよ。私も自分の両親からそのことはよく聞かされていたからね。男の人は顔じゃない、甲斐性だって。おとうさんとのことはって何故聞くの?伸治さんがどうかしてたの、ひょっとして?」

「うん、彼しか知らないから初めは気にしなかったけど、私のことどう考えてくれているのだろうって思うようになったの。つまりね、自分だけのことのように思えるようになったから」

「お母さんだってよくわからないよ、そういうことは」

「満足してるっていう事?」

「いやだ~そんな風に言うだなんて。お父さんの気が済むようにしてくれればそれで構わないって思うし」

「それって本音?」

「ウソって言ってもどうにもならないでしょう・・・」

「お母さん・・・嫌がるようなことをされているの?」

「・・・言えないよ、そんなこと」

母はうつむいてちょっと考えるような仕草になった。
父と母のセックスは私と伸治とのものとは違うような印象を受けた。
母親がこの年まで父からの誘いを断れない理由にそのこともあったのだろう。
男の人とのことが今、自分の興味になっていることが父親の遺伝であることが少しずつ解りかけてくるのであった。

しばらくして伸治から連絡が来た。向こうの両親からの手紙であった。
それには謝罪ではなく身勝手な私を許せないから、裁判に持ち込むと書かれてあった。
夫が自分の両親に何と話したのか知らないが、離婚のことは双方法廷で争うことになってしまった。

弁護士を伴って家裁に行ったのは手紙が届いてから一月ほど後のことになった。
お互いが調停員に状況を説明する。ここまでは顔を会わせないから普段通りに話せた。しかし、伸治と向かい合うと感情が高ぶってしまった。