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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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空爆かくれんぼ

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「おめでとうございます!
 空爆サポーターに任命されました!
 それでは、この空爆スイッチでこの町に隠れている
 かくれんぼさんを見つけてください、スイッチは3回押せます」

空には爆撃機が爆音を立てて飛んでいる。
空爆の威力がどれだけか知らないが、
直撃したらどこにかくれていようとひとたまりもないだろう。

「もし、あなたがかくれんぼさんを空爆できたら
 こちら換金所でのみ、賞金を授与します。
 逆に、3回の空爆を全部ミスったら
 あなたの賞金はかくれんぼさんに流れます」

「そのかくれんぼさんの住所は?」
「こちらです」

あっさりと、相手の住所を割り出すことができた。
家はごくごく普通の一軒家で、
一応家のあちこちを探してみたが隠れてはいない。

「3回しか空爆できないからな、
 慎重に狙っていかないと」

そこからは、かくれんぼさん情報の聞き込みを始めた。
あっちで見かけた、こっちで見かけた。

いろいろな情報が入り乱れたので、
最終的にかくれんぼさんの家を空爆することにした。

「まあ、かくれるつっても、
 一番うまく隠れられる場所はあそこしかないだろ」

俺は空爆ルームに戻ってスイッチを押した。
爆撃機はかくれんぼさんの無人の家を爆撃し、
こっぱみじんに吹っ飛ばした。

「……あれ?」

クリアの報告がない。
どうやら空爆は失敗したらしい。
かくれんぼさんは別の場所に隠れているらしい。

「まずいな……残り2回。
 何も考えずにやるんじゃなかった」

時間はどれだけかけても問題ない。
今度はもっと慎重にかくれんぼさんを探すことに。

備え付けの監視カメラ映像を解析し、
探偵や警察の力を借りてかくれんぼさんを探しまくった。

そして、かくれんぼさんの場所を特定した。

「学校の裏山かっ!」

かくれんぼさんは人を驚かすことが好きで
小学生のころは裏山にこっそり隠れては
油断している同級生を驚かせていたとかそうでないとか。

なんにせよ、人間心理として新しい場所に出向いて
わざわざ隠れることはないだろう。

まして賞金がかかっている以上、
安全な場所に隠れているに違いない。
穴でも掘って普通じゃ絶対に痕跡も見つからないように。して。

「ようし、裏山だ!」

俺は空爆ルームに戻ってスイッチを押した。





「……くそっ! ダメか!」

2回目の空爆も失敗した。
かくれんぼさんは裏山に隠れていなかった。

「あーーあーーもういい!
 もう辞めだ辞めだ! こんなの当たりっこない!」

俺はいら立ち紛れにスイッチを押した。


すると、空爆ルームの後ろにあるロッカーから
俺の探していたかくれんぼさんがひょいと出てきた。

「やったぁ! ゲームはボクの勝ちだ!
 ボクはかくれんぼに成功したんだ!」

「ふっふっふ、かかったな。
 俺は最後のスイッチをまだ押していない!」

俺が押したのは近くにあった窓の開閉スイッチ。
カチッという音に安心して、かくれんぼさんは出てきたのだ。

「な、なんだと!? それじゃあ……」

「ああ、まだ空爆スイッチはまだ1回残っている!」

「……ぷっ。あっはははは!
 お前バカだなぁ、ボクがどうしてここに隠れていたと思う?」

「……え?」

「ここなら空爆する心配が絶対にないからだよ。
 ボクは元々空爆サポーター経験者だからね。
 この部屋に隠れていれば空爆されることもないと知ったのさ」

やっとわかった。
かくれんぼさんにとって、この場所はまさにシェルター。

空爆サポーターが空爆しようものなら、
自分もろとも何もかも吹っ飛ぶことになる。

「さあ、どうする?
 自分もろとも空爆で吹っ飛ぶか?」

「う、うう……」

「そうだそうだ、諦めろ。
 誰だって命は惜しい。金だって命の価値には代えられない」

「うあああ!!」

「ちょっ……まさか押すつもりか!?」


カチッ。
俺はスイッチを押した。


しばらくすると、遠くで空爆の音が聞こえた。

「ははっ……はははっ。
 驚かせやがって、いい加減な場所を空爆したのか。
 あーーびっくりした、ほんとに死ぬかと思った」

「いろいろ考えたけど、
 やっぱり自分の命を落とすのはおかしいと思ったんだ」

「懸命な判断だ。これでお前のスイッチは0回。
 もう空爆をびくびく恐れないで済むってわけだ!
 あはははは! 相手がお前みたいなバカでよかった!」

かくれんぼさんは勝利の高笑いのまま、
空爆ルームを出ていこうとして振り返った。

「ちなみに、最後はいったいどこを空爆したんだ?」

俺は答えた。


「賞金の換金所」
作品名:空爆かくれんぼ 作家名:かなりえずき