うまいめしへの道
あらかじめ言っておく必要があるが、ものすごっく、雑なわたしだ。もうこの歳だ、直るまい。だが、気をつけてゆっくり行えば事は成るであろう。
人参を切る。
何が嫌いかって人参を切ることほど嫌いなことはない。
堅いわすべるわつながるわ。イライラするという以前にうっかり手が滑って「その筋の人」みたいにならないかどうか気が気ではない。
が、それをおして切る。細かく細かく。
戻した切り干し大根と椎茸をきざむ。
あぶらげをきざむ。
ごま油でほどよく炒め混ぜ合わせ、ひたひたになるくらいの水を入れ、かえしを薄く加え、細心の火加減でことこと。
ほわり。できました。フワフワです。
雑なうえに不器用なわたしだ。人の8倍くらいは不器用で、これも矯正はできないだろう。
次のは段取りのみが勝負の一品。阿波踊り必至。だが心をふっと落ち着かせ、自分に言いきかせる。
「やれるわ。あなたなら。」いちいちめんどくせえなあ。
キクラゲと豚肉と卵の炒め物を作る。
キクラゲを水で戻し、よく水気を拭く。気はせくがまあ、拭く。
かっちゃいた卵をまずざっと半熟炒めにしてすぐ器に取り出す。あわてる。出来る限りあわてる。
キクラゲと豚肉を炒め、オイスターソースと酒をあわてて入れる。
そこへ炒めた卵を投入し暴れるようにあわてて、完成。
鍋の中を見入ってたら卵が固まるので焦って器へ盛る。
てらてら、熱々。できました。
白いめしが湯気をたてます。
食卓にはおかず二品のみ。質素。
うまくできたでしょうか。
「すげーうまいマジうまいガチうまい、サイベルちゃん最高だよ!ぼかあ幸せだなあ」
と言わせたいが普通に
「おいしい」とぱくぱく食べているので、よい。
一所懸命作った物には、命が宿る。と思う。
病み上がりの体に、ふつふつと湯がたぎるような感じがしたから。
うまいめしは、ゆっくり、時に超急いでつかまえる。
うまくいったって感じ〜。