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寝心地

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2年間同棲していた彼を親友に寝取られた。
私は財布ひとつで家を出て、
家具付きのワンルームマンションを借りた。

悔しくて眠れないのかと思ったけれど、
不思議なくらいにぐっすり眠れた。


彼は無職で、生活の面倒は私が見ていた。
いつもケンカばかりで、
彼のためにも、自分のためにも、
別れたほうがいいと思っていた。


これでよかったのだ。


彼のいない、ひとりきりの朝は新鮮だった。
とてもいいお天気だったので、
ベランダに布団を干した。

備え付けの布団だけれど、
羽毛布団で温かく、軽く、とても寝心地がよかった。
よく眠れたのはそのせいもあるかもしれない。

ベランダから外の景色を眺めると、
桜の花が咲き始めていた。

これからきっと良い出会いがあると思えたが、
私がいないとだめだ、と言ってくれた彼が、
少し心配になったりもした。



そんなことを考えていると、
羽毛布団から一枚の羽根が出て宙を舞った。

その羽根は真っ赤で、
ちょうど赤い羽根共同募金の羽根にそっくりだった。
私はとっさに羽根をつかんだ。


この赤い羽根は、
彼に募金した2年間に対するお礼だと思うことにした。

共同募金なので、
他にも温かい善意が差し伸べられるだろう、
有効に使うか、使わないかは彼自身の問題だ。
作品名:寝心地 作家名:セリーナ