ダイヤのありか、真珠の名
そりゃ自分だっていちおう女だし、欲しいとは思うよ。
思うけど歯を磨き忘れたりいちにちじゅうねまきのワンピースを着てぶらぶらしてるような中年女じゃ、
石も「ムリムリムリ」と言いそうだ。
実は本物は、ダイヤに関しては見たことがない。
雑誌や広告ではあっても、手に触れたりじっくり眺めた経験がない。
真珠は一度だけ、友人の誘いで田崎真珠の店に行ったことはある。でももう目がくらんで何がなんだか全然。
どちらも、カジュアルで使える、さほど高くないものはある。
でも野獣派の女ならど真ん中を狙いたいでしょう。
「ほうらごらん」と。お下品に見せびらかしたいでしょう。
でもあまり歳くいすぎてから手に入れても、「そんなしわだらけムリムリムリ」と言われそうだ。
わたしの高貴なダイヤはいまだ地中で眠っているのかな。でも掘り起こされないのかもしれない。
わたしの清らかな真珠はいまだ海の中、真珠貝の中に眠っているのかも。
でも取り出されないのかもしれない。
浅き春の夜のはかない願いが少しだけ溶け出して、少しだけ酒が甘哀しくなってしまったかな。
作品名:ダイヤのありか、真珠の名 作家名:青井サイベル