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青井サイベル
青井サイベル
novelistID. 59033
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ゆきあられひょうのち竜巻、そして降ってくる宝のこと

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いつもいい人でなんかいられるわけがない。


考え事が過ぎると(妄想)、わたしは殺人者にでもなれる。
実際に血にまみれた我が手を生々とながめ、地に屠(ほふ)られた被害者が物体に変わっていくのを見たのも一度や二度ではない。
あのレジのひと、わたしがありがとうと言って笑いかけたのに、不愛想だった。
えい。
そんなのまだまし。
もっとずっとむごたらしい想像を、し続けてきた。
ずっといい人でなんかいられるわけがない。


でもそうやっていごいごと過ごしていても、急に眼に飛び込んでわたしを反転させてしまうものがいつもある。
小物入れから出てきた叔母の形見のトパーズの指輪。そのはちみつの輝き。
ふと息をついて見た、わたしのちいさなクリスマスツリーのあどけない笑顔。
テレビの向こうのアイススケーターの、艶っぽいステップ・シークエンス。
わたしはため息をもらし、ただ世界というタペストリー(織物)の繊維に見え隠れする宝にいつも救われる。
そして短い反省。
わたしも美しくなろう。あんなふうに、できるだけ。


きょう、わたしの上には雲が被さり、
ゆきだのあられだのひょうだのを落とし、しまいには最悪の竜巻を通過させた。
わたしはぎりりと首を回して耐えた。
でも、世界の織物は請け負ってくれる。
素敵なものを満載した次の雲をたずさえて、
「明日会いに行くね」
と言っていることだけは。


もう一杯、紅茶を入れよう。