柑橘
それをあなたは齧りましたか?
皮の苦味、溢れる汁、その意味が忘却だということを知っていらっしゃいましたか?
あれはネペンティスです、そうではないように思えますが
あなたは忘れた上にさらに忘れたいのでしょう
ああ、わたしとて同様なのです
人生はめんめんと恥ばかり
見渡す限りの塵芥ばかり
生まれ変わりたくても
世間は昨日の続きのあなたやわたしを
弾劾しながら求めるのです
でももう苦い酒に頼る必要などありません
金色の麻薬に手を染めてもいい頃ですから
わたしはこの柑橘をふつふつ煮て
日の昇る時間のようなジャムを作りましょう
トーストに載せて共に食べましょう
パン屑を払って 会社に行く前に忘れてしまいましょう
甘苦さで少し新しくなって行っていらしてください
わたしもそうすることにします