探せオリジナリティ
これはまずい。45にもなってこれは非常にまずい。
後続に「これがわかる?リッスントゥーミー?ボーイズアンドガールズ?」
と言えなかったらわたしの人生は何だったのか。
で浮上したのはなんとたったの二点のみ。
「ヘヴィメタル・ハードロック」と「絵」、だけだった。
これじゃえばれない。年がら年中えばってたいのに。あーくやしいあーくやしい!(泣)
ヘヴィメタル・ハードロックは初恋も同然だった。
まるで初めての男に犯られ、でもそれでメロメロになりましたという感覚に近い。
もう寝ても覚めてもそのことばかり。部屋はその手の切り抜きとポスターで壁も満足に見れないほどに埋め尽くされ、ステレオからはいつでも祭のような大音響。
そのまま音楽愛はすくすくと育ち、わたしはすくすくではないが育ち、現在に至る。
それだけだ。
絵はなんだか知らないが幼少期から描いていたようだ。
よくあるデッサン無視の「家族と犬とわたし」とか「草原のぬいぐるみ」みたいなのから、今は「頭大丈夫ですか?」(大丈夫じゃないから病院行ってんだよ)というファンタジック系女女女の絵。
自分が思うところの絶世の美女。半神半獣の乙女たち。
コンプレックスがひどいから反動で描いてるんだろう。
その二つをだから、無下に扱われると傷つく。他のはともかく。
もともと自分が傷物だから、両手に残ったわずかなギョクを割られるともう居場所がない。
ノートに隠して描いている大切な陰謀を、興味本位で覗かれてばかにされたら、
わたしは泣きながらトイレに駆け込んでしまうだろう。
少ないんだなあ。だいじなものは。
でも、よかったなあ。少なくて。
この先、身軽でいられるから。
いつか狂った頭で実家から遁走しようとした時、自分の持ち物という持ち物を徹底的に売り、捨てた。
ジーンズ一本、Tシャツ何枚か、上着少し、本5冊、何枚かのCD、身の回りの最低限の物。それ以外すべて。
それは正しかった。
どうせ、持っていけない。ギョクと、記憶以外は何も。
わたしはあの時多分、しごく彼岸に近かった。そう、持っていけないのだ。
それは後続に言えると思う。
あとまで生きてて欲しけりゃいくらでもまた買える。
どうせまた捨てることになるが。