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でんでろ3
でんでろ3
novelistID. 23343
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小悪魔

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奴らとの戦いも、もう5年目になる。
 奴らは突然やってきた。地球の衛星軌道上に、突如、宇宙船とも巨大ロボともつかないものが出現した。
 それは微生物の「クマムシ」に似ていた。そう、高温にも低温にも、はたまた、放射能にも耐え、平然と生きているあの「クマムシ」だ。どことなく熊に似ているのが、その名の由来だ。

 そして、その母艦から攻めてくるものも、クマムシに似ていた。戦闘機並みのスピードで空を駆け、地上戦もそのまま行えるという、こちらも、戦闘機とロボットの両方の機能を持った化け物だ。
 当然、戦いは非常に苦しいものになった。俺たちは奴らを「熊」と呼び、
「今日は、熊公3匹、ぶっ倒してやったぜ!」
などと、戦果を報告した。
 しかし、そんな程度じゃダメなのだ。このままじゃ、じり貧だ。何か大きなことを仕掛けないと……。

 

 そんなときに、ある噂が流れた。
「ある女が、敵母艦の内部地図を持っている」
 そんな噂、皆、信じなかった。信じていないのだが、なぜか、その噂を口にしてしまう。そうして、噂は広まっていった。

 

 俺は思った。
「その噂に賭けてみよう」
 戦闘を離れる許可をもらい、ひたすら噂を追った。
 初めは手掛かりを掴むのさえ難しかった。
 また、幾度となく、命の危険にさらされた。
 あるときは事故を装い。また、あるときは、正面から攻撃を仕掛けてきた。



 ある日、黒尽くめのスーツを着た男達から逃げて大通りを走っていると、急に首根っこを掴まれて、狭いビルとビルの間に引っ張り込まれた。
俺を引っ張り込んだのは若い女。しかも、とびきりの美人だ。
女は何故か、悪戯っぽく微笑むと、やおら俺に抱きついて来て、熱いキスをしてきた。
そのとき、黒いスーツの男達が大通りを駆けて行った。
しかし、最後の1人が俺達に気付いた。
「おいっ! そこで何をしている?」
女は即座に振り向くと、
「お楽しみの最中に決まってんだろ! とっとと消えないと蹴っ飛ばすよ!」
と凄い剣幕でまくし立てた。

 黒尽くめの男は、一瞬怯んだ。そのとき、先を行く仲間に声をかけられ、だいぶ差が開いてしまったことに気づくと、舌打ちをして、仲間の方に駆けて行った。


「ありがとう」
「それは、キスへの御礼かしら?」
「いや、そうじゃなくて……いや、そうでもあるんだけど……」
「ふふふ、可愛いのね」
「いや、助かった。じゃあ」
私が行こうとすると、女に腕を掴まれた。
「ファーストキスの御礼になにかご馳走してよ。




 その後、俺たちがどうなったかって?
おいおい、野暮は言いっこなしだぜ。
そうだな。アレがファーストキスだったってのは、絶対嘘だ。
Zubi`sBARのミートローフサンドを賭けてもいい。

 しかし、翌朝、彼女は消えちまった。
たった1枚のコインを残して。



 どうしてそう思ったのかは、俺にも分からねえ。
俺は、本部に戻ると、技術班にコインを解析するよう頼んだ。
果たして、そいつは、ビンゴだった。
コインにはクマムシ母艦の全てが仔細に記録してあった。



 俺達は最初で最後の総攻撃をかけることにした。
クマムシ母艦は、熊どもの集合体だった。
至る所に熊が待ち構えていて攻撃を仕掛けてくる。
各所には中ボスのような奴らがいて、そいつらの戦闘力はハンパなかった。
手を守る手熊。呼吸器を守る王火熊狗。眼を守るためにいた、目の下のクマも強かった。



 俺達は、心臓部目指して、進んだ。
多くの精鋭達が次々と死んで行った。
そして、到達したんだ。
俺だけが、たった一人で。



 心臓部の奴らは、雑魚でさえ強かった。
しかし、俺は、そいつらを気力だけでねじ伏せて行った。
俺は、立っているのもやっとだったが、遂に相まみえる事ができる。
ラスボスに。



 最後の扉が開く。この中に奴が……。
しかし、その中にいたのは、あのコインを残して消えた女だった。
「な、なぜ、お前がここに?」
「ふふっ、あなた達しぶといから、きりがないと思って……。こうすれば、めぼしい連中を一掃できるでしょ。まぁ、こっちにも被害出たけどね」
「そ、そんな、そんな……、お前が核熊(コアクマ)だったなんてーっ!」
俺を支えていたすべては崩れ去り、その場に倒れた。
作品名:小悪魔 作家名:でんでろ3