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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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AV女優と魔王の城

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AV女優がその世界にやって来たのは
すでに魔王の手によって世界の9割が支配された末期だった。

「せっかく私のAVを店に並べてもらったのに、
 どうして買わないのよ。
 私のあられもない姿を見たくないの?」

「あぁ……もう死ぬしかない」
「明日もお先真っ暗だ……」
「いっそ自殺でもしようかな……」

超有名なAV女優なれど、
もう夢も希望も性欲も減退しきったこの世界では
どこの誰にも需要はなかった。

「こういう場合、勇者とかいるんじゃないの?
 伝説の勇者を召喚するとかして
 魔王を倒しに行かせればいいじゃない」

「もうやったさ……。
 世界の人間たち全員の知恵を集めて
 伝説の勇者の償還儀式を行ったのだよ……」

「あら、いいじゃない。
 で、その伝説の勇者はどうなったの?」

長老はAV女優を指さした。

「召喚されたのは、あんたじゃ」

村人はいっそうため息をついた。

「「「世界を救う勇者どころかAV女優だなんて……」」」

「なによぅ、あんたたち私のことを低く見てるわね?
 どうせAV女優だとか思ってるでしょ? 違うからね?
 私は、いえ私たちはプロの女優なのよ」

「お前さんに何ができるっていうんだい」

「見てなさい。私の超絶技巧で魔王を骨抜きにしてやるわ」

「それは無理じゃ」
「えっ」

「魔王は性別なんていうものがそもそも存在しない。
 というか、人間に欲情するなんてこともない」

「むぅーー……」

とはいえ、このままじゃ売れっ子女優としての名が廃る。
自分が映ったパッケージが
店頭で平積みされているなんて許せない。

なんとしても、魔王には消えてもらわねば。

「バズーカとかで魔王を狙撃できないわけ?」

「それも無理じゃ。
 魔王の玉座には不思議な力があって
 あそこに座っている限りどんな力も及びはしない」

AV女優にもおぼろげながら絶望的な状況がつかめてきた。
そして、はっきりと宣言した。


「わかったわ、それじゃあ私が世界を救ってくるわ」


「ちょっ……お前さん話を聞いてなかったのか!?
 なんの力も持ってないのに無茶じゃ!」

「私には磨き上げた演技力があるから(ドヤァ」

「お……終わった……」

村人の絶望感などそっちのけでAV女優は魔王の城にやって来た。


「魔王様! 人間の使者が来ております!」

AV女優は魔王にうやうやしく謁見することに成功した。

「魔王様、はじめまして。
 私は殿方の劣情を癒す仕事をしているものです」

「ほほお、それは珍しいなぁ。
 だが聞いたことはある。AV女優というやつだな」

「はい、さすが魔王様」

「先に言っておくが、ワシにハニートラップは効かないぞ。
 人間のような下等で愚かな生物などに
 特別な感情を抱くことは絶対にないからな」

「存じております。
 ところで、魔王様はAVをご覧になったことは?」

魔王は思わぬ問いかけに少し驚いた。

「あるわけがないだろう。
 人間がなぜあれをことさらに好むのかもわからん」

「でしたら、私が魅力をお伝えいたします。
 魔王様、僭越ながら私の指示に従ってください」

AV女優は自らの職場経験を活かして、
魔王にAV女優のいろはをどんどん教えていく。

「はい! そこで喘ぎ声っ!」
「もっと息をはぁはぁさせて!」
「カメラを意識しちゃダメ! あくまで自然に!」
「ちがうちがう! もっとありのままを見せるの!」


いつしか魔王も面白がりはじめ、
気が付くと真っ裸の魔王が転げまわる状況になっていた。

「いやぁ、AVとは実に面白いな。
 そしてここまでの複雑な演技を求められるとは
 まったくAVというものは奥が深い」

「気に入っていただけて幸いです。
 では、私はこれで」

AV女優はそのまますごすごと村に帰った。




村に帰ると、長老に声をかけた。

「長老、今から魔王の城にいってもらえませんか?」

「なんじゃと!? ワシに魔王と戦えというのか!?」

「いいえ、そんなこと言いませんよ。
 ただ魔王の玉座に座ってきてほしいだけです。
 そうすれば、力を奪い取って世界を救えるでしょう?」

「そう簡単に玉座を奪えたら苦労しとらんわ!
 あそこには魔王がいるんじゃぞ!」

「そうですね、でも……」


AV女優は店頭に新しいAVを1本並べた。
 

『衝撃! 魔王AVデビュー』



ドドドドドドド……。


その後、顔を恥ずかしさで
顔を真っ赤にした魔王がすっとんできた。

長老とは入れ違いに。