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ニュースの時間

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才能



エヌは学校の成績は良くなかったが、特技があった。手先が器用なことである。その器用さで町工場でトップクラスの職人になった。その腕の良さで他社から引き抜きの話もよくあって、ちょっと気に入らないことがあるとすぐに会社を辞めてしまう。

しばらく遊んで暮らし、金が無くなると募集する会社に出向きすぐに採用される。そんな暮らしを続けていたのだが、世間はそう甘くは無かった。職人技がコンピュータのお陰で誰にも簡単に出来るようになってしまったのだ。

エヌにはもう一つの特技があった。それは犬に好かれるというか黙らせる能力である。吠えていた犬もエヌが犬の目を見るだけで、イヌは何事も無かったように静かになる。

そんなわけでなるべくしてなってしまった仕事、いや稼ぎ方はピッキングをによる空き巣だった。猛犬注意などという張り紙なんて気にならない。避けるのは最近設備のセキュリティ住宅である。

エヌの今日のお仕事は、下調べ十分だった。金持ちの独身老人で、大きな番犬がいる。その主が出かけるのを確認し、門のカギを難なく開けて中に侵入した。さっそく聞きつけた番犬が立ち上がりこちらを向くのを見つけた。

エヌはその犬には優しく見えるだろう視線でじっと見つめた。すぐに犬は腹ばいになって尻尾を振っている。それを確認してエヌは玄関の鍵を開け始めた。この鍵も難しいことは無かった。そしてすーっと開けた、つもりだが開かない。よく見ると下方にもう一個鍵がついている。

エヌがしゃがみこんでその鍵を開けようとしていると、背中に何かが覆い被さるのを感じた。えっ! 予想もしない展開に頭の中がフル回転する。この親しみをこめたような抱え方、それでいて絶対に離さないという意志も感じる。それに、うわーっ! 何だよ、その腰使いは、おい、やめろ~~

     *         *

………次は、お手柄ワンちゃんのニュースです。今朝早く、エム市のエスさん宅に空き巣に入ろうとした男を飼い犬が押さえつけているのを、外出中に忘れ物をとりに戻ったエスさんが見つけ警察に急報し、男が現行犯逮捕されました。余談ですが、この逮捕された男をワンちゃんが悲しそうに見送っていたということです。………
作品名:ニュースの時間 作家名:伊達梁川