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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「化身」 第七話

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「待て!話を聞け。元はと言えばお前の村人がこの村のみんなを殺したんだぞ。その中の一人の娘の怨念をおれは晴らすために鬼になった。その時に犯人の子孫を殺すことが出来たらおれを元の人間に戻して、怨念も同じく娘に戻って夫婦になろうと約束した」

「そのような身勝手な約束が通用すると思っておるのか。目の前でお前に連れ去られ食べられた許嫁になんの咎があるというのだ。今ここでお前を殺しこの連鎖を封じ込めることがおれの手向けになるのだ」

「娘は食べてはおらぬ。連れ去ってある場所に匿っておる。おれが人の姿に戻っておるのは違う人間を食ったからだ」

「この期に及んで命乞いをするのか!情けない奴め」

「違う。菊はおれに情けをかけてくれた。今までさらった女の命乞いをする態度とは違っておったのだ。村へ返すつもりでいたが、おれが菊から離れたくなくなっていたのだ」

「まことのことだと申すのか!どちらにせよおれの許嫁を手籠めにしたことは許さぬ。死ぬ前にせめて菊の居場所を教えろ。それが人として生きているお前の証しだぞ」

「頼む。菊はある人に預けてある。危険はない。それを教える代わりに一つだけ約束してくれないか?」

「まずは菊の顔を見てからだ。嘘をついて俺から逃げようなどと言う考えだろうからな」

「菊に会わせたら聞いてくれると約束してくれ」

「ああ、まずは会えたらだな」

昌春は観念していた。百年もの長い時を同じことの繰り返しで生き続けていることをだ。たとえ人を食わなくても鬼の姿で永遠に生きる運命を背負わされている。
人を食った鬼は半年間、完全な人の形を維持出来たが、その後徐々に鬼の様相を呈してくる。昌春と称した男が半年間姿をくらますのはこの村に居てはその姿の変化に気付かれてしまうからだ。

それなのに作治の前に姿を現したのは何故だろう。
この時作治は途方もない闇が自分に迫っていることを予想だにしなかった。
作品名:「化身」 第七話 作家名:てっしゅう