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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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臓器の声が聞こえないんだって!

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胃腸「あーー! なんか疲れたぁ!
   お腹いたいーーやすませろーーうああああ」

心臓「静かにしてくれ! 鼓動が乱れる!」

大腸「はーーい、ガス通りまーーす。ガス通りまーーす」

肝臓「…………」


「やっかましぃぃ!!」


自分の体に向かって思い切り声をあげた。
けれど収まるどころか臓器たちはさらに声をあげる。

胃腸「やかましいだぁ? どの口が言うんだ。
   だいたい年甲斐もなく深酒なんてするからだろ!
   おかげでこっちはてんてこ舞いだ! なあ肝臓!」

肝臓「…………」

大腸「あのーー腸内環境なんとかなりませんかぁ?
   なんかもうそろそろやばいんですけどぉ」

心臓「ああああ! ひとりにしてくれっ! 鼓動が乱れるっ」


「ちくしょう! 一個も進まねぇ!」

明日が締め切りだというのに、
小説はまっさらなページがいつまでも続いている。

普段は誰も気にしないような臓器の声ですら、
今の煮詰まって神経質な俺にはわずらわしく感じてしまう。

それこそ、時計の秒針の音のように。


「お前ら……静かにしろぉぉ!!」


俺はついに臓器の騒がしさに耐えきれなくなり、
階段を自ら転げ落ちる暴挙に出た。

この体の主導権が俺にあることの再確認と、
このまま死んじゃえばプレッシャーから解放されることを願って。


「痛ててて……やっぱり人間はそう簡単に死ねないなぁ」

起き上がってみると、頭や体の節々は痛いものの
階段を転げ落ちただけではそう死ねなかった

ただ、別の恩恵があった。

「あれ? 臓器の声がやんだ?
 やったぁ! これで集中できるっ!」

俺の半自殺行為により臓器たちも
"こいつに逆らったら自分の身が危ない"と理解したのだろう。
これでやっと小説に……。



「お、おい。胃腸。なにかしゃべろよ。
 いつも余計なくらいしゃべっていただろ?」

返答はない。
他の臓器にもいくら応答しても反応がない。

「も、もしかして……臓器壊しちゃった?」

いくらなんでも、ぴたりと声がやみすぎだ。
もしかしてさっきの衝撃でなにか壊れちゃったのかも。



そこで、近くの病院に行って臓器を見てもらうことに。
このままでは自分の体が不安でとても執筆などできない。

「先生、俺の臓器どうですか?」

「ええ、いたって健康ですよ?」

「健康!? そんなわけないでしょ!
 臓器の声が聞こえないんですよ!
 俺の声をずっと無視してるって言いたいんですか!」

「いやだって本当に異常なかったんですもん……」

「もういい!」

やっぱりこんな場所にある普通の病院じゃだめだ。
もっとちゃんとしたところじゃないと。

「おい! 小腸! 膵臓! 脾臓!
 なんでもいい! 返事しろっ!
 お前らが俺を無視してるのはわかってるんだ!」

やっぱり反応はない。
確実にあの階段落ちから異常が出ているに違いない。

今度は名医が評判の大学病院に行ってみた。

「で、先生! どこに異常があるんですか!
 というか、どんな異常があるんですか!」

「臓器は全部大丈夫でしたよ?」

「はあああ!? だったらなんで
 臓器の声が聞こえないんですか!
 先生は自分の臓器の声が聞こえてますよね!?」

「ええ、もちろん」

「なのに俺は聞こえないんですよ!
 これぜったいおかしいでしょ! あんた誤診してますって!」

「いや、3回調査してみましたが
 やっぱりあなたの臓器はどれも大丈夫でした」

「もういい!! あてにならない!!」

どいつもこいつもバカばかりだ。
もしかして、俺の臓器の異常をわかったうえで黙ってるんじゃないか。
もっと悪くなってから病院に来てほしいからって。
手術して金をせしめとろうとしているのか。

俺は自分の体をどんと叩いて臓器に声をかける。

「やい、お前ら! なんで黙ってる!
 俺を不安にさせるつもりかもしれないが
 そんな浅知恵もここまでだ!!」

もう国内の金の亡者な医者はダメだ。
今度は国外の世界的名医のもとを訪ねた。

「……ということで、臓器の声がぴたりと止んだんです。
 これは絶対に異常があります。調べてください!」

「わかりました。せっかくなので全身調べてみましょう」

足のつま先から頭のてっぺんまで検査をした。
調べてほしいの臓器だけど。

検査が終わると俺は先生に詰め寄った。

「で、先生! どこが悪かったんですか!
 どの臓器がどんな風に悪かったんですか!!」

先生は言いずらそうⅡ顔をゆがませる。

「まさか……すべての臓器が壊れてるんですか!?
 はっきりおっしゃってください!
 俺の体のどこが悪いんですか!」



「脳ですね。
 階段から落ちた衝撃で、
 臓器の声が聞こえなくなってます」