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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「化身」 第六話

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「空き家かも知れない。ちょうど都合がいいから雨宿りをさせてもらおう」

作治はそう思い込んで引き戸を開け中に入った。
天井からぱらぱらと強い雨音が聞こえる。あばら家なのだ。
しかし、雨は漏れて来ないから助かった。

一刻ほど待っても雨が上がらなかったので、諦めて板の間で横になって休んでいると、深夜になって誰かが入ってきた。正しくは帰ってきたというのだろう。
作治は目を覚ました。目の前の男と顔を会わせる。

「雨宿りのつもりでお借りしました。誰も住んでいないと思いましたのでついゆっくりしてしまいました。すぐに出てゆきますので許してください」

そう詫びる作治の顔を見てうつむきながら男は答える。

「そうでしたか。では、朝になったらお出掛けなさってください。私は奥で休ませてもらいます」

「ありがとうございます。ご厚意に甘えさせてもらいます」

作治は頭を下げた。男は視線を合わせることなく奥へ入っていった。
春に村へ作治が訪ねて来た時に男は身を隠していた。そして長居するという事が解って村を離れて違う場所で暮らしていた。
作治が村を去ると知って戻ってきたのだ。このタイミングでしかも自宅で出くわすとは運命のようなものを感じられて怯えていた。

朝を迎えて別れの挨拶を交わすと一旦外に出て作治は振り返り、男に話したいことがあるから改めて中に入らせて欲しいと言った。
断ることは疑われると思ったのかその言葉に首を下げて頷く。

「昨夜は大変失礼しました。厚かましくご厚意に甘えさせて戴きお礼を改めて言わせてください」

「そのようなことは宜しいのです」

「では、私の話を聞いて頂けませんか?隣村からやってきた理由をです」

「はい」

「水無瀬にはある男を探す用事でやってきました。白鬚神社の主様にすべてお話をして許しを戴きました。その男は実は妖怪で今は人の姿に化けて潜んでいるのです。昨年の暮れに私の許嫁が連れ去られ食べられてしまいました。そのさらわれたときの奴の言葉からこの村に潜んでいることが解ったのです」

「そうでしたか。そんな恐ろしいことがあったのですね」

「ええ、春先から今まで村に住んですべての村人に会い話をしましたが、当てはまる男は見つかりませんでした。あなた様一人を除いてです」

「私は昨日出稼ぎから戻ってきたのです。また冬を迎えると同じように出てゆくことを繰り返して過ごしておりますので、お会いできなかったのです」

作治はさらに追及する。
作品名:「化身」 第六話 作家名:てっしゅう