復活の手は大樹の園から生まれる。紅色の花の輪舞曲の中から黄金の手が伸びる。黄金の手は復活の手の一つの形だ。金色の輝く手は拳を握り締めている。虹色の鳥イカンダルがそびえ立つ大樹に止まる時、手は手のひらを見せる。手のひらには文字が書いてあった。古い言葉オームだ。古代の言葉は、手の持ち主が限りない高貴な者だとはっきりと示している。楽な生活を営むものは苦難を知るものに比べて打たれ弱いことは間違いないのだが、一方で高貴な者は楽でも苦しいわけでもない呪縛の生活をおくっている。ただ、ひたすらに光を踏みつける高貴な者の名前はアシャガルと言う。イカンダルは飛び立った。と、同時に手はぐんぐんと伸びた。腕が現れ、たがて、体が現れ、そして、足が現れた。顔はどこかへいってしまった。他愛のない虹色の鳥イカンダルは手に握られ、潰されそうになる。その時、一刀の雷が空から裂くように落ちてくる。手は雷に打たれ、焼け焦げて地面に真っ逆さまに落ちていく。だが、手はひとつではない。もう一つの手がイカンダルを捕まえに伸びていく。シュッと空気をまっぷたつに切る音がする。手は速く伸びて、イカンダルを強く握り締める。イカンダルは空き缶が地面に落ちた時のような音で鳴く。だが、再び雷が天から降ってくることはなかった。ただ、その手のひらには文字が書いていない。オームという言葉が書いていなかったのだ。それが良かったのか悪かったのかはわからない。ただ、鳥はだんだんと生きたまま腐食していき、生命の輝きを失っていく。手は遥か彼方にあった真実を引き寄せたのだ。鳥を捕縛した手は鳥を持ったまま縮んでいく。宮殿の壮麗な装飾を思い起こさせる、腕に散りばめられた宝石は金の亡者の欲望に火をつけた。金の亡者は天にいる。雷を落とした者もやはり、金の亡者だ。彼らは腕の宝石を狙っていた。手は紅色の花の中心に戻ったが、機械的な動きの中にも怯えがあった。金の亡者は次に獣を送った。蛇だ。いや、蛇は獣でないというかもしれない。ただ、獣のような蛇だ。空を飛ぶ蛇なのだ。蛇は手に食らいつき高貴なものを滅ぼそうとする。天から降りた蛇を高貴な者は腕ごと捨てた。どこに?暗黒の泉に。泉に捨てられた腕と蛇は水中でも格闘を続けて、決着がついたときは既に決してぬけだせない暗黒に蛇は沈んでいた。金の亡者はさらに、罠を考えた。腕の宝石はもうないにも関わらず、亡者は亡者たる力を発揮し始めた。雨がざあざあと降ってきた。赤い雨、亡者たちは血となって、高貴なものの中に入ろうとした。高貴な者は静かに花の奥に逃れようとした。しかし、血液は花の維管束を通って、高貴な者に迫る。花の根には高貴な者の体があった。体は次元の違う世界に向かおうと徐々に影となっていき、逃げ切れるかと思われた。しかし、体の皮膚から一滴の血が染み込んだ。その瞬間、体は真っ赤に染まり、弾けた。後に残ったのは紅色の花と青い空だけであった。