『 黒い烏 』
カラスの羽根が真っ黒ではなく、すこし紫がかっているような気がして私は足を止めました。
本当に、艶のある髪の毛のようで、よく見ると何かの柄が透けて見えました。
「俺がなりたいのはゾウ」
カラスは、とにかく大きくなりたいようでした。
黒猫がそこを走り抜けたので、私はそちらに目を向けました。
柵をくぐった瞬間に、黒猫は消え、そこはコンクリートがあるだけの場所でした。
「カァ!」
見上げるとそこには、黒いカラスがおり、こちらを見下ろしていました。
黒い影がその角を曲がったようだったので、私はそこへ行きました。
走り抜けた影は居らず、そこには一枚の大きな葉が落ちていました。
あまりにも、人が人でなくなった時代なので、カラスが笑ってる?
そして、自然はいつの日も、人にだけ優しいのです。