ドッキリ vs ドッキリ
「ドッキリ大成功~~!!」
「……え? いや何が?」
「なにもしてないけど」
「えっ」
プラカードを持ってきて何事かと思った。
大成功も何も、まだ何もされていない。
「きっとお前はこれからドッキリに引っかかるから
先に宣言しておこうと思ってな」
「それを本人に明かして引っかかるわけないだろ」
「いいや絶対に引っかかる。
そして、必ず最後に深く絶望するね」
それだけ言って友人は去っていった。
きっとこれからドッキリの準備でもするんだろう。
すると、中学の同級生から電話がかかってきた。
『たっ……大変だ!
山田が……山田が交通事故で……!』
中学の親友の住所は体が覚えていた。
葬式会場にはいると、全員が涙を流していた。
「このたびは……」
てってれーー。
「「「 ドッキリ大成功~~!! 」」」
参列者全員がプラカードを出した。
その瞬間、腰が抜けてみっともなく倒れてしまった。
「は、はぁ? ドッキリかよ?」
奥から、したり顔の友人がやってきた。
「はははは。びっくりしただろう」
「くそ……もう引っかからないぞ」
あれだけ前置きされて引っかかるなんて。
こんなに早くドッキリ仕掛けられるなんて思わなかった。
「おい、あれなんだ?」
「煙……?」
「火事なんじゃないか?」
参列者は窓から外を見ている。
俺もつられて見てみると、あの方角は――。
「お、俺の家じゃないか!!!」
慌てて飛び出して家にUターン。
家に到着する途中で、はっとしたがもう遅かった。
てってれーー。
「ドッキリ、大成功~~!!」
家までのルートにプラカードを持った人を立たせていた。
途中で「もしかして」と気付いていたのに。
遅れて、友人がドヤ顔で到着。
「またドッキリに引っかかったな」
「うるさいな! 途中で気づいたわ!!」
「でも引っかかった」
「ちくしょーー!」
パニックになると簡単なウソでも信じてしまう。
そこを突かれるなんて、なんだかしゃくだ。
「ところで、今お前の見ている世界は現実じゃない。
実はこの世界はお前の脳が見ている幻想なんだ。
本当のお前はベッドの上で人命補助装置につながれて……」
「さすがに引っかかるかぁ!!」
友人の背中から隠しきれていないプラカードも見えていた。
ここまで成功続きだからってなんでも引っかかると思うな。
「もうドッキリには引っかからないからな!」
俺は一切の連絡を絶って、
人の言葉もなにひとつ信用しないようにした。
それからというもの、一度もドッキリには引っかかってない。
ただ、この生活はあまりに窮屈だ。
「いつ来るかもわからないドッキリに
なんで俺がびくびくしなくちゃならないんだ。
あいつらは今も自由に生きているというのに」
この不毛なドッキリ合戦に終止符を打たなければ。
そこで俺はドッキリを仕掛けることにした。
ドッキリ作戦中の人がドッキリされた場合、
計画していたドッキリの内容をすべ話さなければならない。
この世界におけるドッキリルール。
きっと今も虎視眈々と作戦をいくつも練っているだろうから、
俺がドッキリをしかけて洗いざらい話してもらおう。
ぷるるる。
『もしもし?』
「もしもし!? 大変だ! お前の家に泥棒が入った!」
『え、ええ!? 泥棒!?
オートロックで120階建てのマンションなのに!?』
「その油断が命取りなんだよ!
とにかく早く来い! 警察が今来てる!」
『わかったすぐ行く!』
あっさりドッキリは成功した。
あれだけ騙していた友人でもパニックになると引っかかる。
俺はプラカードを持って友人宅で待っていた。
まもなく息を切らせて友人がやってきた。
「警察は!? 泥棒は!?」
てってれー。
「ドッキリ、大成功~~!!」
友人はきょとんとマヌケ顔をさらした。
その顔を見れただけでもやった価値はある。
「泥棒なんていませ~~ん。
さんざんドッキリやってくれたからなぁ。
騙された気分ってどうだ? ん?」
「うぅ……わかったよ、もうだまさない」
「待て待て。それもドッキリって可能性があるからな。
ドッキリルールをちゃんと守ってもらおうか」
何が真実かわからなくならないためのルール。
ドッキリされた人間は、実行中のドッキリをすべて明かすこと。
「わかった。ドッキリルールだな。
実は実行中のドッキリが1つだけあるんだ」
「どんなドッキリなんだ? 早く話せよ」
「今までお前にやってきたドッキリ……。
あれはすべてドッキリなんかじゃないんだ」
てってれー。
俺は深く絶望した。
作品名:ドッキリ vs ドッキリ 作家名:かなりえずき