サイレント
昨日から人に逢っていなかったわたしは
話がしたくて
その見知らぬ家のドアを叩いた
音が聞こえないのだろうか
応答が無い
ノブに手をかけて引いてみると
ドアは開いた
窓が開いているのか
部屋の中もかすんでいた
かすかに人影が見えた
随分といるようだ
近づいてみれば
どこかで見た記憶がある
次々と近づく人は皆記憶がある
「やぁしばらくです」
と
私は挨拶したが
誰もそれに応えてはくれない
わたしがその人たちが
レプリカだと知ったのは彼らの体を触ったからだった
静止したわたしの記憶が
この小さな家に飾られていた
サイレントの世界に
わたしだけの時間が過ぎて行く
わたしの声だけが音を持つ