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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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インチキ呪詛師と殺し合い

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「世界を統べる私には敵が多い。
 当然、腕の立つ殺し屋が必要となるので
 これから君たちの腕を競い合ってもらう」

ボスの言葉で全員が隔離された場所へと連れていかれた。
その中には、世界で名をはせたスナイパー。
絶対に失敗しない暗殺者。
世界最悪の連続殺人鬼などなど。

およそ"殺し"にかけてはエキスパートな連中ばかり。

「じょ、冗談じゃない……なんで俺が」

その中に呪詛師として俺も参加させられていた。

ネットで"誰にも気づかれずに1万人を処刑した"とか
大ボラ吹いていたのをボスが見つけたらしい。

なんだよ呪詛って。
言葉で人が死ぬわけないじゃん。

孤島にたどり着くと、それぞれ別の場所へ送られる。

「時間は無制限。逃げようとすれば即処刑。
 最後の1人になった殺し屋だけが脱出できる」

そんな無茶な……。

何十人もの一流殺し屋と、
1人のインチキ呪詛師による殺し合いがはじまった。


「いやいやいや! やっぱり無理だ!」

始まらなかった。
俺は運よく見つけた洞穴に隠れて入口をふさぎ、静かに待った。

外からはさっそく悲鳴やら銃声やらが聞こえる。

「こんなことなら、呪詛なんてインチキだと話せばよかった。
 うう……死にたくない。まだ結婚もしてないのに。
 恋人もいないのに……」

ボスの剣幕に負けてしまった自分を呪った。
俺の呪いなんてなんの力も持っていないけど。

一応、これまでやっていたインチキ呪詛でも書くかと
洞穴の壁に呪詛らしきものを書いてみた。

「こんなんで効果があれば……いや無いか」

参加者全員の名前を書いたところで飽きて辞めた。
本当に呪い殺す力があったなら1万人を処刑する前に逮捕されてるし。

「ああ……死にたくない」

洞穴は何もない。
でも外に出ればすぐに殺される。

やることないので、好きな相手の名前をただ書いていた。

「はぁ……玲子ちゃん……ひと目会いたいなぁ」




ジャリッ。


洞穴の入り口から足音が聞こえた。
足音はゆっくりとこちらに近づいてくる。

「どどどど、どうしよう……!
 俺なんかが勝てる相手じゃない……!
 土下座しても絶対に見逃してくれないに決まってる!」

洞穴の最深部まで逃げたものの、
一方通行なうえ行き止まりなので逃げ道はない。


ジャリッ。


あああああ、ごめんなさいごめんなさい。
呪詛とか言ってお金捲き上げてごめんなさい。
俺にそんな力はないんです。お経も読めないんです。

「見つけたぞ」

ついに、殺し屋と相対してしまった。
男は歴史上最強の殺し屋とうたわれた男。

「これで終わり……だ……」

男は突きつけた銃口から弾を撃つことなく
そのまま前に倒れて死んでしまった。

すでにその体には激しい戦いの後が刻み込まれていた。

「え、俺……優勝しちゃった……?」

男の死亡から数十分もすると迎えがやってきた。

俺がひとり洞穴で名前を書いている間に
一流の殺し屋たちは腕を競い合ってぼろぼろになっていたらしい。

ボスは上機嫌だった。

「まさか君が優勝するとは思ってなかった。
 君の力はインチキなんじゃないかって思っていたんだよ」

「は、ははははは! そんなわけありません!
 私の呪詛は百発百中!
 どんな相手でも必ず殺す力があるんです」

「今回も呪詛を書いたのか?」

「ええ、もちろん。
 私は洞穴に隠れていると見せかけて
 呪い殺す相手の名前をずっと書いていました。
 結果的に、呪詛の力でみんな死んだのです」

「それはすごい! 君は一流だな!
 ぜひ君の力の痕跡を見てみたいな!」

「もちろんです、洞穴を案内します」

ボスはいたく感動して洞穴に足を運んだ。
壁面には今回勝手に共倒れしたほかの参加者の名前が書かれていた。

「どうです? 呪詛は本当だったでしょう?
 ここに書かれた人間は全員私の呪いの力で死んだのです!」

ボスはある一角をじっと見つめている。

「……ボス?」




「どうして、私の娘・玲子の名前が
 こんなにもたくさん書かれているんだ……」

「あ、そ、それは……」

ボスの銃弾が俺の眉間をとらえた。