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謎の病

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 病室に看護師が入ってきたちょうどその時、急に胸が苦しくなった。呼吸も苦しくなった。ぼくの慌てように看護師が血相を変えて近づいてくる。なだめるように肩をさすってくれた。しかし、胸の痛みは治まらない。呼吸は今にも止まりそうだ。手に負えないと思ったその看護師は、ぼくから離れ病室を出て行った。

 ほどなくして、胸の激痛が和らいだ。呼吸も徐々に整ってきた。何かの発作だったのだろうか。あの苦しみがいつまた襲ってくるかわからないというのは恐怖だった。しかし、ここは病院だ。すぐに医者が見てくれるだろう。雪道で転んで大腿骨を骨折するという不運で入院していたのだが、逆に幸運だったのかもしれない。
 そうだ、せっかく入院しているのだから、精密検査を受けてみようかな。

「先生、こちらです」看護師が戻ってきたとき、再び胸を圧迫するような痛みが襲った。やはり、なにか心臓に疾患があるのかもしれない。白衣を着た男性医師が、なにやら触診を始める。看護師もその傍らで心配そうにこちらを見ている。
 呼吸が苦しく、手足をバタつかせる。医師の指示で看護師がぼくの身体を押さえつけた。その瞬間、さらに呼吸ができなくなった。心臓を手で掴まれているようだ。意識が遠のいていく。身体に力が入らなくなった。
「手術室の確認をして来い!」医師の大きな声に身体をビクンと揺らして、看護師が病室から出て行った。

 それから医師が聴診器を使って胸の音を聞いてくれた。そのころには徐々に呼吸ができるようになってきた。心臓の痛みもない。発作は再び治まったようだ。
 なにやら医師が首をひねっている。異常な音は聞こえないということだろうか。ひとまず安心のようだが、やはり精密検査をする必要がありそうだ。

「手術室確保できました」入口から声が飛んできた。
 心臓は痛まない。呼吸も安定したままだ。

 そこには、先ほどとは違う年配の女性看護師が息を切らして立っていた。
作品名:謎の病 作家名:星鷹 宏