待ち合わせ
今日は楽しみにしていた彼女との初デート。しかし、寝坊して待ち合わせに三十分も遅れてしまった。待ち合わせに向かうと、彼女は怒った様子もなく、笑顔で迎えてくれた。本当にできた子だ。大切にしないといけない。
「さあ、行こう」彼女の手を引く。
「運命って信じる?」彼女は赤らめた顔で足を止めた。
いきなり変な質問をするなとは思ったが、きっとロマンチストなんだろう。僕と付き合えることが未だに信じられないでいるんだ。
「もちろん」と強く呼応する。
照れ笑いを浮かべて、抱き着いてくるのではと想像をしていたが、彼女は、それじゃあ、といって手を解いた。
「ちょっと待って」事態が呑み込めずにたじろいた。すぐに背を向ける彼女を追いかける。
もう少しで彼女の手に届きそうなところで、大男が僕と彼女の間に割って入った。
「なんだよ。お前」見知らぬ男が野太い声を上げる。
「なにって彼氏だよ。彼女の」一回り違う体格に焦りを感じたが、精一杯虚勢を張る。
「おまえは元カレだろ? 俺が今の彼氏だ」
「何言ってんだよ。俺たち、まだ付き合いだしたばっかりだぞ」
「だから、さっき別れたんだろ?」
状況が呑み込めずに彼女を見る。
「あなたが遅刻していた間に、この人が話しかけてきてくれたの。そしたら、運命を感じちゃって。あなたとは、とりあえずデートしてみようと思っていただけだし、あなたも、運命を信じてくれるって言ったから、この人と付き合うことにしたの」彼女は大男の腕にしがみつく。
二人の仲睦まじい姿を見送りながら、二度と遅刻をしないと誓った。