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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ぜったいに愉快なTV番組

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「あーーはっはっは!! 最高!
 もうこの番組最っ高! 楽しすぎる!」

番組が終わると、笑い疲れて泣き疲れたけど
久しぶりに感情を爆発させたことで
なんだかスッキリしていた。

「ああ、いい番組だったなぁ。
 絶対に来週も見逃さないぞ」

つけっぱなしのテレビからは、
次の番組が始まるまでの5分にニュースが流れていた。

『先日から売り上げを伸ばしている
 コラコラ・コーラは累計売上記録の更新に成功しました』


翌日、友達の会話はとうぜん昨日の番組。



……のはずだった。

「え? テレビ? 見てないよ」
「その時間はゲームやってたからなぁ」
「つか、うちにテレビないし」

「なんてこったぁぁぁぁ!!
 君たち、人生損している!
 あんなに笑って泣ける番組なのに!!」

「そんなに面白いの?
 いったいどんな番組なんだよ」

「えーっと……あれ?」

まるで思い出せなかった。
あんなに楽しんだはずなのに、番組内容はいっこも。
とりあえずコーラ買って帰った。

翌週、今度は忘れまいと録画も準備して
同じ時間にテレビの前に正座した。

「この番組をもっと世界に広めないと!
 そのためには、俺の記憶に刻み付けなければ!」

番組開始前まではそんなことを考えていたが、
はじまるやすっかり意思は吹き飛んで番組を楽しんでしまった。

「ああーー今週も楽しかった。笑い転げた」


で、どんな内容だったっけ?


「……変だなぁ。まるで思い出せない。
 あんなに笑ったのにどんな番組だったっけ。
 あ、そうだ! 録画してたんだ!」

録画レコーダーの記録をチェックするも、
なんと『録画に失敗しました』の死刑宣告が表示されていた。

「ああ、もうなんだよ!
 こんなに感動できる番組が見返せないなんて!」

一応、友達にも「今週も楽しかったんだよ」報告をしたものの
やっぱり説得力に欠けたのもあり信じてもらえなかった。
とりあえず、コーラだけ買って帰った。


翌週、今度はノートとペンを持ってテレビの前に待機。
レコーダーでも録画できないのなら、
いっそアナログな方式で記録するしかない。

「ようし、どんとこい!」

でも、時間になっても番組ははじまらなかった。
先週で最後だった事実を知るまでかなり時間がかかった。

「うおおおお! なんてこったぁぁぁ!
 もう泣いたり笑ったりできないのかよぉぉぉ!!」

あの番組ほどハンカチをぐしょぐしょにするほど泣けない。
あの番組ほど腹筋が壊れるほど笑えない。

もうあの番組が見れないなんて!!

「そ、そうだ!
 テレビ局ならきっとデータが残っているはずだ!」

俺はすぐさまテレビ局へと向かった。
着くと、俺のほかにもあの番組を求めた人がやってきた。

「あの番組をまた見せてくれ!」
「金ならいくらでも払う!」
「あの感動をもう一度! 頼む!」

「困ります! 困ります!」

警備員は必死に止めていたが、
数があまりに多すぎて耐えきれなくなった。

テレビ局になだれ込む人波に俺も紛れ込んでいた。

「さがせ、さがせーー!」

押し寄せた人たちは必死にデータを探す。
俺は運よく倉庫らしき場所にたどり着いた。

中には記録媒体が山積みにされている。
側面に書かれた番組タイトルをくまなく読んでいく。


「あった!! あったぞ!!」

あの番組のデータが見つかった。
見間違えるはずもない。
最高の感動を与えてくれる最高の番組なのだから。

「みんな! データが見つかったぞ!
 これからモニタールームで上映会だ!!」

全員に連絡してモニタールームを占拠した。
いつ警備員がやってくるかわからない。

それまで、せめてこの番組を見返したい。
そしてあの感動を心から感じたい。

「それじゃ、再生するぞ!」

全員が息をのんで見守る中、静かに番組がはじまった。


※ ※ ※

警備員は応援を要請して、
不法にテレビ局に押し入った連中を探した。

「おい、モニタールームに集まってるらしい!」

「わかった。すぐに追い返すぞ!」

モニタールームに警備員が到着すると、
中から大笑いする声が響いていた。

そっとドアを開ける。


「……ひっ!」

警備員はその光景に凍り付いた。

大画面のテレビ番組には延々と同じCMが流されていた。
全員、代わり映えしないCMを観ながら大爆笑している。


「聞いたことあります。
 人間の脳に作用する曲を流すだけの
 実験的な番組が2回だけ放送したらしいですよ」

とある警備員がつぶやいた。

「そんなもの、いったい誰が何のために……」

番組が終わると、警備員たちは押し入った全員を帰らせた。
大いに笑って、大いに泣いた彼らは同じことを言っていた。


「さあ、帰ってコラコラ・コーラ飲むか!!」