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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

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 事業企画課は、国内外の情報機関との折衝や人事交流などに一義的に携わる部署であり、海外関係機関を招いた大がかりな会議では、ロジ面(管理調整)を一手に取り仕切っていた。直轄チームと同じ第1部にあるが、美紗がこの課に属する人間と話す機会は、これまでのところ全くなかった。そのことも、ますます美紗を心細くした。
「待っている間は、何をすればよろしいんですか?」
「特に仕事はないんだ。単にクリアランスの問題でな。あんたはまだ会議場のある棟には自由に出入りできないから、1部長と一緒に行動してもらうことになる。第五、第六セッションは、基本ぶっ続けでやる予定になってるから、あんたの出番が終わっても、日垣1佐が身動き取れないんだよ」

 件の情報交換会議が行われる場所は、美紗の勤務する部署が入る棟の隣の建物の地下階にあった。そこは、特に秘区分の高いエリアに指定されていて、自由に立ち入ることのできる人間は非常に限られていた。常駐者以外は、統合情報局所属の職員であっても、事前申請をしなければ入ることが許されない。
 二か月前に情報局に異動したばかりの美紗は、まだそのクリアランスすら取得していなかった。このため、上官である第1部長の便宜で、本来立ち入り不可のエリアに「監視者付」で入るという体裁をとることになったらしい。

「まあ、今うちに来てる海外の『お客さん』と同じ扱いだな。不愉快だろうが、そういうところは、うちは融通きかないから」
 すまなそうに眉をひそめる比留川に、美紗は、全然構いません、と笑顔で答えた。新しい仕事を一つ任せてもらえたことが、単純に嬉しかった。
「二つ目のセッションでは、私にできることはないですか? ただ待っているだけでしたら何か……」
「いや、二つ目のには出なくていい。日垣1佐がどうにかするだろ?」
 比留川は、自分の席に戻ると、足元のキャビネットの中から紙の束をごそっと出した。
「うちから出すのはこれだ。昨日、高峰が全部準備しててくれて良かったよ。二十部あるから、名札が置いてある席に全部配布してくれ。この内容に沿って、日垣1佐が冒頭のブリーフィングをする」
 そして、書類の山の上に、当該会議の関連資料とUSBメモリを置いた。