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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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今日はセンター(中央)試験2日目

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センター試験会場には、
受験生のほかに見物人が壁を背にしてずらりと立っていた。

「あれ、なんなの?」
「カンニング対策かな」
「でも試験官っぽくないよね」

不安な受験生は口々に予想しあっていたが、
『試験監督』の腕章を付けた人が入ってくるなり黙った。

「それではセンター試験を始めます。
 センターとはありとあらゆる点で"しっくりくる"場所です。
 センターを見つけることこそが、人生で最も大事なのです!」

私はどきどきしながら試験内容の発表を待った。

「では、第一次センター試験の内容は
 この受験会場のセンターに行くことです。
 試験開始!」

ジリリリリッ!!

試験開始のベルが鳴るやいなや
受験生は教室の中央の席に向かって猛ダッシュ。

「どきなさいよ!! センターはあたしよ!」
「なによ! 最初からここに座ってたのよ!」
「知らないわよ! いいからどきなさい!」

それを黙って見守る見物人。
受験生でもないのに、いったいなんでここにいるのか。

「それより、センター試験よね」

教室では暴動に近いほど大きな争いになっていた。
でも、教室のセンターを取り合うことが1次試験の答えなら
合格するのはせいぜい1、2人。

ふるいにかけすぎていると思う。

「そうか! わかったわ!」



センター試験会場の学校の3階、1年2組の教室につくと
すでにいくらかの受験生が到着していた。

そして、ここにも先ほどの見物人が立っている。

「やっぱりここだったのね」

「君で1次試験の合格者は最後だ。席が埋まったからね。
 では、2次試験へと進もう」

この学校は5階建てで、教室は3クラス。
そうなるとセンターはここしかない。

「2次試験は面接だ。
 入ってきてくれ」

すると、教室には同年代の人が入ってきた。
それぞれにアルファベットが書かれたプラカードを持っている。

「この中でセンター友達を見つけるのが2次試験だ。
 では、それぞれ自己紹介をしてくれ」

試験官がそう言うと、一人ひとりが一歩前に出て
かわるがわる自己紹介をはじめた。

「Aです。メールもLINEも必ず返信します。
 定期的に友達とお出かけするのが好きです。
 よく女子会を開いては友達と語らっています」

「Bです。動くことが好きで、ジムにも通っています。
 最近はボルダリングを初めて、写真をネットにアップしてます。
 友達からはよくいいね!をもらっています」

「Cです。本が好きで、人が多いところは苦手です。
 人からは良く流されやすいって言われます。
 でも流行には疎くて……ネットや雑誌も読みません」

自己紹介が終わると、受験生はそれぞれの人のもとに集まる。
やっぱりAが一番人気だった。

「友達として一番はこの子だよね」
「みんなの中央にいそうだもん」
「というか、ほかの候補者がいまいちだし」

私もそう思う。
Aに一歩踏み出したところで違和感を感じた。


"センター友達を見つけるのが2次試験だ"


センター……しっくりくる。
Aの子は本当にしっくりくるだろうか。

自己紹介を思い出してみると、
人との距離感が誰よりも近いことがわかる。
Aとの友達ライフは間違いなく息が詰まるだろう。

"今度の休日女子会しましょう!"
"既読したんだから返信してよ!"
"ねぇどうせ何もしてないんだから出かけましょ!"

そんな誘いが再三送られてくるはず。
それはもう友達の距離感がしっくりこない。

残るはBかC。

私が選んだのは……


ジリリリリッ!

「2次試験終了だ。合格はCを選んだ人だ」

私はなんとか合格した。

「君はどうしてCを選んだんだい?」

「Bは自分一人でできることしかアピールしてませんでした。
 友達になっても自分のことしか考えないと思ったので」

「だからって、ネガティブなCを選ぶかい?」

「ネガティブだからこそ、友達になりたいと思ったんです。
 第一印象が悪い人ほど、
 一番"しっくりくる"最高のセンター友達になるものですから」

最終試験に備えて最後の教室へと向かった。
教室には試験官と多数の見物人。

「では、最終試験だ。
 最終試験はこの世界で生きる上で
 もっとも重要視される事柄を審査する極めて重要な試験だ」

「試験の内容は……?」

「では発表する。最終試験は――」






※ ※ ※

「みんなーーありがとーー!
 永遠のセンター・あえだまつこでーーす!!」


「「「 あっちゃーーん!! 」」」

最終試験の人気投票で負けた私は、
センターの横で必死にダンスをしていた。

見物人がまさか投票者だったなんて。

「今回は私がセンターになったから。
 私のことを嫌いになっても、
 アイドルグループのことは嫌いにならないでください!」

ああ、やっぱり勝てないな。
最終試験はこの子のこういうところが評価されたんだ。

私は不思議と悔しくはならなかった。




「あっちゃんを選んだ理由?
 そりゃもちろん、顔が可愛くておっぱい大きいからさ」

見物人はみな同じ理由で投票していた。
全員を殴り飛ばすのにそう時間はかからなかった。