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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「優しさの行方」 第六話

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「友幸!お母さん。こんな時間にゴメン。開けて中に入れて!」

返事が無かった。より強く霊媒師は呪文を唱える。静江のノックは続く。
幸い週末で隣の部屋には誰もいなかった。
静江が鍵穴から中を覗くと友幸がうつぶせになっているのが見えた。これでは鍵は開けてもらえない。そのことを霊媒師に言った。

「帰って行ったな。もういいだろう」

「誰が居たというのですか?何が見えたんでしょうか?」

「誰がと言うより、何かが居た、と言うしか今は答えられない」

「これからどうすればいいのでしょう?」

「村山さんは私の車で少し寝ているといいよ。心配はないがまだ2時まで少し時間があるので私はここに居る。時間が過ぎたら車に戻るのでそのあとは朝まで待ってもう一度友幸君を起こそう」

「はい、そうさせて戴きます」

友幸は朝になってドアーがガンガン叩かれているのに気付いた。

「誰?」

「友幸!お母さんよ。開けて、はやく」

「えっ?お母さん?待ってて」

鍵を外すと扉は勢いよく中へ開いた。

「友幸!心配したのよ。あなた昨日の夜ここで倒れているように見えたから」

「昨日の夜に倒れていた?ボクが?それよりどうして誰と来たの?」

「霊媒師の先生とよ。ほらあの時の」

「ああ、そう。倒れてなんかいないよ。寝相が悪かっただけだよ」

霊媒師が入ってきた。

「友幸君。キミは嘘をついているね?こうなった以上正直に話してくれないと困るんだよ」

その鋭い口調にたじろぎながら友幸は口を開いた。

「何も話すことなんてないよ。そんな言いがかりつけないでよ、先生」

「今朝の0時過ぎに鍵穴から中を覗かせてもらったんだよ。友幸君の身体は見えなかったけど、近くに少し小さな何者かの身体の一部が見えた。その瞬間すごい霊気を感じたからこれはただ事ではないと、直ぐに呪文を唱えたんだよ。気付かなかったのかい?」

「ドアーの外で呪文を唱えていたと言われるのですか?その時間に?」

「そうだよ。まさか寝ていたとは言わせないよ」

「寝ていたと思います。先生の声は全く聞こえませんでしたから」

「夢は見ていたのか?」

「夢?もう見ませんよ。母さんにもそう言ったはずだけど」