エデンの園の販売員
二人はさっそく行ってみることにした。
「わぁ、すごい。いろんなものがあるのね」
「どれもとてもおいしそうだ」
二人は見たこともない果実に目を輝かせている。
すると、奥からはっぴを着た販売員がやってきた。
「なにかお探しですか?」
「ええと、そうですね」
男はここに来る前に買おうと決めていたものを販売員に伝えた。
さすがにこれだけの種類を前に
自分たちだけで探すのは大変だと思った。
「ええ、ええ。もちろんそろえていますよ、こちらです」
販売員は喜んでその場所に案内してくれた。
「こんなにあるんですか」
「はい、当店は品揃えに関しても自信を持っていますから!」
「うーん、それでもまだこんなに種類があるのか」
見たところ、大小さまざまなうえに
色も濃いものから薄いものまでそろえられている。
いったいどれを取ったらいいものか。
「お悩みですか? でしたら、こちらをどうぞ」
「それですか? 見たところ普通のものに見えますけど」
「そうでしょうとも。ですが今だけ限定で、
カケホーダイプランとパケットツーシンリョームリョーが
ついてくるんです! お得ですよ!」
「いや、いいです……」
なんだかよくわからないんで、と続くはずだったが
販売員はさえぎられたことでさらに熱を上げる。
「なるほど! お客様、さすがですね!
実はもっとお得なものがあるんです!」
「あの……」
「じゃん! これはどうですか!
カゾクワリのプラスアシストサービス付きで
さらにネントクワリとニネントクワリもついてきます」
「いや、それもいらないかな……」
普通のをください、と続けるはずだったが
販売員はその先をさえぎってかぶせ気味に答える。
「ふっふっふ……なるほどなるほど。
お客様、どうやらただものではないとお見受けしました。
いいでしょう、とっておきをご紹介します」
販売員はひとつを手に取って、二人の前に突き出した。
「これならどうです!
ギガホーダイのワイファイワリもついて
さらにスマートバリューコースのアンシンプランエスエスと
ゲツガクテンソーリョウバクゾウサービスもついてます!
これを買わないと絶対に損をしますよ!!」
そこに1匹の蛇が通りかかった。
「あ、一番安いリンゴなら
別の棚にあるやつだよ」
二人は蛇にそそのかされてさっさとリンゴを買って帰った。
販売員は二人の行動に驚いていた。
「まったくわからない!
どうしてわざわざ劣悪なほうのリンゴを取るんだ!?
なんのオプションもついていないのに!!」