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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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野良猫

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初詣で着飾った人たちが行き交う境内に、野良猫が2匹歩いていた。尾の長い縞模様のアメリカンショートヘヤに似た猫である。野良猫と分かるのは体が汚れていたからであるが、毛並みも艶が無かった。猫は尾を立てて悠然と人ごみの中を歩いた。本堂の裏手はこんもりとした林があった。どうやらそこに行くらしい。
 猫の後を行くと、小さな祠の脇に、アルミ容器が置いてあった。猫は既にその容器に顔を突っ込んでいた。猫の数も5匹に成っていた。祠の脇の木には「猫に餌を与えないでください」とベニヤ板に注意書きがあった。そのベニヤ板も端の方はめくれていたから、かなり前の物だと分かる。
 猫達は食べ終えると、舌で口のあたりを舐めまわした。食事を終えた至福感を感じ取れた。わたしは少しそこにいたいと思い、石のベンチにマフラーを敷いて座った。アルミの容器がどうなるのかを知りたかった。手帳を出し、祠をスケッチした。15分くらい経ったのだろう、30代の女性があたりを観ながら、素早くアルミ容器を持ち去った。その動作は、明らかに後ろめたさを背負っている。わたしは女性の後を追った。なぜ自分がそんな行動に出たのかは自分でも分からなかった。女性が野良猫に餌を与えることが悪いことだと誰が言い出したのだろうか?命あるものの命を繋ぐ行為が善ではなく悪と誰が言ったのだろう。わたしが思っていたように、女性が入って行った家からは猫の鳴き声がした。
 孫を連れ訪れたショッピングセンターのペットショップでは、30万円もする猫が予約済みとなっていた。ペットは犬派よりも猫派が多くなっているようだ。これから野良猫が増えて行くような気がする。そして、その猫たちに餌を与える人たちが悪者にされてしまう。
作品名:野良猫 作家名:吉葉ひろし